日本列島の都道府県にはどこでも鉄道がある―と思い込んでいる読者が多いと思う。ところが無いところもあるのだ。沖縄県である。戦前には県営軽便鉄道があり「ケ―ビン」と呼ばれ親しまれたのにあの沖縄戦争で破壊されてしまい以後五十八年間も鉄道がない。その沖縄にモノレールが誕生した。鉄道の復活である▼軽便鉄道というのは新幹線や本線のような大型ではなく、一回りも二回りも小さくしたもので本州でも地方の私鉄などで活躍したものである。沖縄は四周を海に囲まれたところなので「ケービン」となったのだろうがそれにしても六十年間近くも鉄道がないというのは日本では珍しい。那覇に新設のモノレールは空港と市内を結ぶが、写真で見るとデザインも明るく真に気持ちがいい▼完成したはいいが採算を危ぶむ声も専門家には大きい。だが、開業してから一ヵ月の乗客数は上々。見学を兼ねてのお客さんも多かったろうけれどもこの調子で行けば大丈夫の見方も増えているそうだから頼もしいではないか。稲嶺恵一知事に請われて社長に就任した湖城英知さんは「サトウキビ畑を走った記憶が懐かしい」と軽便を思い出しながら「モノレールはその生まれ変わり」「県民の宝」にと力強い▼この会社の制服はアロハシャツ風な「かりゆしウエア」というもの沖縄らしくていい。恐らくは郷土の織物だろうし色彩も華やか涼しげで暑い国にふさわしい。これに蛇味線の音と琉球舞踏でも加われば南国・沖縄そのものなのである。 (遯)
03/09/09