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はばたけ!ダチョウ飼育(中)手間かかる雛の飼育=高額で売買、メスの成体

9月11日(木)

 「ダチョウ飼育で、一番気をつかうのは孵化してからの三カ月です」。
 前田リカルドさん(四二)は、第二アリアンサでダチョウ飼育に取り組んで五年目になる。
 デカセギで七年半ほど群馬や千葉に。九八年に帰国し、「何かやらなければ」と探していたところ、ダチョウ飼育に目が止まった。
 それからさまざまな資料で独自の研究を重ね、「いける」と判断、家族の手助けを得て、ダチョウ飼育に取り掛かった。三カ月の雛五十羽(二十五つがい)を購入した。
 ダチョウ飼育者にとって孵化後三カ月が飼育期間中、最も神経を使う時期となる。寒さにも暑さにも強く比較的に飼育が容易といわれるダチョウだが、やはり雛には特別の対処法が必要となる。
 昼は戸外で放し飼いだが、夜間には夜露などにぬれないよう、十数羽ずつ飼育小屋へ。人間にも慣れさせるため、一晩中ラジオを流し、ゴム人形などを置いておく。
 こごえないようストーブも設置し、消毒も絶えず行い、床は常に清潔にしておく。それでも「三カ月中、一割ほどは死んでしまう。始めた当初はほとんどを死なせてしまったこともある(前田さん)」という。
 COONTRUZでは、雛にマイクロチップを埋め込み、番号を付けている。識別を容易にする理由のほかに、同じ親鳥から生まれた雛同士の交配が起こらないように気を配っているという。
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 「落ち着かなくなるのもいるし、全然変わらないものもいる。それが、だんだん分かるようになってくるから面白いよね」。
 午後三時から六時まで、数回飼育場を見まわるのは、ダチョウが産卵期を迎える六月から十一月までの前田さんの日課だ。
 はたと足を止め、ある一点に向けられた厳しい視線のさきには、ダチョウの雌がしゃがんでいる。
 ストレスを感じた時に示す、羽を大きく広げるしぐさの後、立ち去ったその場所に卵はない。
 「んー、だめだったね」と新たに歩を進める前田さんによると、八月現在、一日に二、三個を生むのは、現在十三羽の雌(全体平均二日に一個)で、九、十月が比較的に多く産卵するという。
 雄のくちばしと足が赤く染まりだすと、交尾期を迎えた証拠だ。三歳くらいから生殖活動に入るダチョウは、昼夜を問わず、一日六~十数回交尾を行う。喧嘩するつがいもいるため、隔離する必要もあるが、飼育場への不必要な立ち入りは極力行わないのが基本だという。
 交尾期において、人が来るなどの状況変化は、ダチョウにストレスを与え、不妊の原因にもなるからだ。
 なお、産卵期の雌は八千レアルという高額で売買されるという。
    (堀江剛史記者)

■はばたけ!ダチョウ飼育(上)=ブラジル唯一の日系組合=高いがヘルシーな肉

■はばたけ!ダチョウ飼育(中)=手間かかる雛の飼育=高額で売買、メスの成体