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コラム 樹海

 政界の一寸先は闇。野中広務氏の政界引退は、まったく突然のことであり、衝撃が走った。自民党の元幹事長であり大臣のポストもこなした実力者であり、実際に政治を動かしてきた人物でもある。もっと解かりやすくは、田中軍団から竹下派を経て小渕派、橋本派と続く最大派閥を動かす大物政治家なのである▼この人は青年団活動から政治の世界に入り地元の町長になった後に京都府の府議員になり革新知事と戦い保守派知事を誕生させて副知事に就任している。このために国会議員になったのは遅い。が、行動力は抜群で瞬く間に郵政族のドンとなりNHK会長を追い落とすなどの威力を奮った。北朝鮮とも深いコネがあるらしく、あまり賢明とは言い兼ねる言動もしているのは世間が周知の通りなのである▼郵政族のボスでもあり、郵政民営化を政治信念とする小泉首相とは真っ向から対立する。道路公団の民営化も首相の持論。利益導入政治を生き抜いて来た野中氏には、この政策論も耐えられない。二十日に迫った総裁戦でも「断固戦うべし」が野中氏であり、藤井孝男氏を擁立したのも小泉首相との対決姿勢と読んで間違いない▼ところが、派内には首相を支持する参院の青木幹雄氏や衆院の村岡兼造氏も小泉氏を支援すると明言する始末で収まりがつかなくなる。多分、これに嫌気がさしての引退表明だろうけれども、何か寂しさが付きまとう。恐らく橋本派は分裂するか亀裂も深まる。あるいは、野中氏の引退表明は、入り相の鐘のような挽歌を聞く想いもする。 (遯)

03/09/11