9月12日(金)
♪六甲おろしにさっそうと~。プロ野球セ・リーグの阪神タイガースのリーグ優勝が秒読みに入った。コロニアでも数多くの「虎キチ」が、胴上げの瞬間を待ちわびている。一九八五年以来、長年雌伏の時期が続いていただけに、その喜びは格別だ。十九日には、二十年前に結成されたブラジル猛虎会が中心となって、リベルダーデ区のニッケイパラセホテルの「レストランつばき」を会場に優勝祝勝パーティーを企画。コロニアだけでなく、日系企業の駐在員など幅広い層が一体となり、快挙を祝おうと呼び掛けている。初代会長の青木靖彦さん(六六)は「コロニアが活気を取り戻す呼び水となれば」と盛り上がりを期待する。
一九八〇年から九四年まで、つばきを経営していた青木さんは西宮市出身。コロニアや駐在企業の枠を取り払い、かつての「日本人街」を活性化したいと八三年に、ブラジル猛虎会を結成。阪神球団も公認で、海外では米国のロサンゼルスに次ぎ、二番目の発足だった。同年六月に開かれた発会式には網野弥太郎・アミノ商会社長や水本毅・リベルダーデ商工会会長らコロニア重鎮を初め、現在野球のブラジル代表の監督を務める佐藤允禧さんら幅広い層が顔を集めた。現在でも会員は八十人を数えるという。
阪神が前回優勝した八五年十月には青木さんが経営する市内のレストラン「とら」で、約二百人のファンを集めて鏡割りなどの祝勝会を開いた。
十八年ぶりの勝利の美酒を味わおうと、青木さんや兵庫県人会長の尾西貞夫・明石屋商会社長らが中心となって今回のパーティーを企画した。六月頃から、「虎党」を集めるきっかけを待っていたという尾西さんは「毎年、夏以降に失速するので今年も裏切られると思っていた」と嬉しい誤算だったと明かす。
十九日午後七時に始まるパーティーでは、鏡割りも予定されるほか八五年の活躍を記録したビデオや、青木さんが日本から持参した今年の阪神の活躍ぶりを収めたDVDの画像も流す。また、六甲おろしのテープや甲子園名物の「ロケット風船」も取り寄せ、甲子園の熱気を再現する。「コロニアだけでなく、進出企業の皆さんもぜひどうぞ」と青木さん。
十八年前の祝勝会当日が、大学受験日だったため涙を飲んだという山田忠正さんは、現在サンパウロ市内で鍼灸・マッサージ専門学校を経営。大阪府から十三歳の時に両親と来伯後、阪神を応援し続けてきた。毎朝、インターネットの速報で阪神の勝敗の結果を調べている山田さんは「十八年間、長かった。ようやくこの日が来た」とすでに参加申し込みを済ませている。
盛り上がりはリベルダーデ区にとどまらない。
アリアンサの弓場農場では、日系三世のマリアン・今本さん(四八)が毎日、テレビの前で一喜一憂している。
高校野球を好きだったマリアンさんは「甲子園イコール阪神」との思いから、虎党の仲間入り。八五年当時は、ラジオ中継で阪神の優勝を知った。現在はNHKのスポーツニュースで、毎日阪神の活躍に接しているという。優勝が決まれば、農場の虎キチと一緒に祝うつもりだ。「バースや掛布のサインが入ったメガホンや旗も引っぱり出した。今か今かと待ちわびています」と声を弾ませた。
十一日現在で阪神の残りマジックは二。最短で十三日の対中日戦で、優勝が決まる。
パーティーの参加費用は四十レアルで、問い合わせ・申し込みは明石屋宝石店(11・3208・1833)のエレーナさんまで。