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有機農業を視察研修―ドミニカから有山さん

9月13日(土)

 JICAサンパウロ支所(小松雹玄所長)は、営農普及事業の一環として、先進地農業研修を二十五年以上実施している。ドミニカのコンスタンセ市から有山広見さん(四六、二世)が来伯、二日から十五日までの日程で、有機農業技術の視察研修を行っている。サンパウロ州立農学研究所サンロッケ試験地を中心に、有機農家をまわり母国に有機野菜の導入を模索している。

 ドミニカ中央の山脈に隣接するコ市は、標高千二百メートル。周囲を山に囲まれた言わば”ドミニカの避暑地”だ。冷涼な気候と山に囲まれた地形の影響から、観光業が盛んで市の収入の六〇%を支える。「地形的な理由も重なり、空気がよく滞る。観光客への影響を心配する観光業者と、農家の間で農薬使用が問題になってきた」と同農業の導入のきっかけを語る。
 有山さんは、二十タリア(一・二五ヘクタール)の土地でアルファッセ、キャベツ、ニンニクなどを生産している。首都のサントドミンゴ市のスーパーを始め、隣接するアメリカ合衆国マイアミ市にも輸出している。
 「米国の税関を通るときに、農薬が基準値を超えていないかいつも心配する。雇用した農夫が、農薬の分量を間違えている可能性があるからだ」。同農業の副次的な効果として、輸出する際の心配がなくなることも指摘している。
 有機農業への関心は高い。火曜日と土曜日にサンパウロ市のアグア・ブランカ公園でフェイラを行う、有機野菜栽培農家の堀田ジョルジさん(四九)は「昼までに、めぼしい野菜は売りきれる。中華料理屋の買出し人は、午前五時ごろには訪れて買っていく」と驚く。以前、研修生として来伯したドミニカ日系農家もすでに、サ市のスーパーで有機野菜のコーナーを設けて好評をはくしている。
 有機農業はすでに世界的な潮流だ。JICAで働く農業事業担当の村上ビセンチさん(四六)は「欧州では一〇%が、日本では三%がすでに有機農業になっているようだ」と語る。
 注目される同農法だが、コストは割高のようだ。同研究所に勤める石村勇雄博士は「有機農法は良い土壌が必要不可欠。土壌を作るのに有機だとコストは六割増しだ」と明かす。
 有山さんは、同農業を導入する第一のきっかけは、健康面だと明言する。「コンスタンセ市には、未亡人が多い。農業に従事する男たちが五〇代を過ぎると農薬が原因で亡くなってしまうからだ」と母国の現状を苦笑いする。「私の父も農薬が原因で喉頭ガンにかかり亡くなった。残された家族のためにも、有機農業を導入したい」と意気込んでいた。
 果物分野では、欧州向けの有機バナナがすでに世界一。有機野菜分野で、新たな取り組みが始まった。