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SF映画顔負けの時代?!=新旅券はハイテク満載=日本もテロ対策で導入へ

9月20日(土)

 指紋や顔の輪郭の電子情報が旅券に不可欠?――。海外旅行をする際に、SF映画顔負けの時代が到来しそうだ。一昨年の米国同時多発テロ以降、国際的にテロリストの不法入国を防ごうとの取り組みが活発化。特に出入国管理の強化を打ち出している米国は二〇〇四年十月以降、偽造がしにくい顔画像や指紋などの「生体認証技術(バイオメトリクス)」を盛り込まれた旅券を所有しない外国人にはビザの取得を義務づける、との方針を打ち出している。入国はもちろん、乗り換えだけでもビザが必要だ。すでに米国は機械読みとり式(MRP)の旅券を持たない旅行者には、今年十月一日からビザの義務づけを打ち出している。米国政府は実施の延期を検討しているが、現段階では不透明な情勢が続く。米国経由で日本に向かう日系人にとって、憂鬱な時代がやって来た。(下薗昌記記者)

 ■テロ対策
 生体認証技術は、顔の形や虹彩と呼ばれる瞳の模様、指紋など体の一部の特徴から各個人を識別する方法で、偽造が極めて難しいとされる。このため、テロリストとのいたちごっこが続く出入国管理では「特効薬」として期待が高まっている。米国の一部の空港ではすでに不審人物の生体情報を照合する方法を導入。日本の国土交通省も今年一月、成田空港で日航の社員などを対象に試験を行った。
 この制度では、各国が共通の方法を導入し、情報を交換する必要があることから、現在、国際民間航空機関(ICAO)で国際基準を作成中だ。
 ■外務省
 こうした国際世論を受け、外務省も二〇〇五年度から生体認証技術を応用した旅券を導入予定だという。すでに外務、法務、国土交通の三省は来年度予算の概算要求に研究費を計上、研究を進めていく。
 従来、日本では不審者の入国チェックは、テロリストの手配リストや氏名、生年月日などを現場で照合するだけで、入国審査官の直感力に頼るのが実情だ。
 導入時期については、まだ不透明だが、外務省はホームページ上の「米国に入国予定の方へ」との欄で、米国入国査証の制度変更について、広報。
 機械読みとり式(MRP)でない旅券を有する外国人は、十月から米国入国の際にビザを必要とする、との内容が中心となる。
 これに加え、米国の生体認証旅券についても「〇四年十月以降、電子化された生体情報(顔画像)が搭載されていない旅券ではビザが必要」と言及。さらに日本も将来的には生体認証旅券を導入することを検討している、と告知している。

有効期間選択に注意
新旅券は発券に10日間

 ■懸念
 旅券の有効期間の選択は慎重に――。サンフランシスコやロサンゼルスなど米国内はもちろん、上海やシドニーなど世界各国の日本総領事館では、ホームページ上で旅券の有効期間を五年にするか十年にするかの判断に注意を促している。
 仮に、現在十年間有効の旅券を取得しても、生体認証旅券が導入された場合、新たに作り直す手間が生じるからだ。もちろん、強制的な義務ではないが、米国に入国、もしくは経由を希望する旅行者は生体認証旅券を所持するか、ビザの取得が必要となる。
 日本に向かう際には米国を経由するのが大半の上、数多くの日系人、邦人を要するブラジルだが、サンパウロ総領事館では、生体認証旅券の広報について今のところ静観を保つ考えだ。「国会で旅券法が改正され、正式に決まってから」と西山巌領事は慎重な構えを崩さない。
 ただ、仮に導入が決まった場合最大の懸念材料は、旅券発給に手間がかかることだ。最先端の技術を要する旅券だけに「おそらく本省での一括発給となる」と西山領事。申請は同総領事館で可能だが、日本から送られてくるため十日近くを必要とする。西山領事は「従来ならば四日、遠隔地の人には即日発行していたのだが」と不便さを認める。
 同時多発テロ以降、過敏ともいえる対応を見せる米国の動きが、一般人の生活にも思わぬ陰を落とし始めている。