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ロンドリーナ=治安悪化でブラ拓移転か=流れ弾で従業員が死亡

9月20日(土)

 パラナ州ロンドリーナ市ジャルジン・ノッサ・セニョーラ・ダ・パースで二十九年の歴史を持つブラ拓製糸工場事務所が、周辺の治安が悪く、従業員に対する安全が確保できないとして、同市から撤退しようとしている。同地域は二つの治安悪化地域に挟まれており、先月末にはブラ拓従業員、ダミアオン・ラモスさん(二七)が勤務中、流れ弾に当たり死亡するなどギャング抗争の被害を受けている。十一日付、ジョルナル・デ・ロンドリーナ・オンラインが報じている。
 撤退案が知らされたのは十日、壁と講堂入口の弾痕についての会議中だった。これらの弾痕は、夜中に強盗が押し入ろうとして撃ったものという。会議にはネジソン・ミシェレッチ市長(PT)、ジュランジール・ゴンサウヴェス・アンドレー市警署長ほか、市議会議員や下院議員らも出席した。
 ブラ拓のアントーニオ・タカオ・アマノ所長によると、工場は生産活動が可能であればほかの都市に移転することができるが、移転により、現在の従業員三百五十人をクビにすることになるという。「技術的には、サンパウロ州内のドゥアルチーナ市やバストス市などに工場を移転するのに、なんら問題はない。これらの都市には、ありあまる生産能力がある。ただ、私たちが移転までしたくないと考えていることを明確にしたい」と話している。
 同工場を閉鎖する計画は、安全確保のための支出を計算した上で考案されている。工場では、パンタナール街に面するすべての窓に鉄格子を設置、そのために四万レアルを投資した。かつて存在したブロック塀は、十四歳の少年を殺した犯罪グループが隠れ場所として使用したため、周辺住民によって破壊されているが、より高く頑丈な塀を建築する場合、約七万レアルの経費がかかるという。工場は、ほかにも資産や従業員を守るための安全対策を施しており、すでに十五万レアルを費やしている。
 これまでの投資は生産能力を高めるために活用できたはず。「今後の安全対策への投資とは『工場を移転すること』であり、それによって、生産の技術条件を改善できるだろう」としている。アマノ所長は、安全確保の訴えがまったく聞き届けられない場合の不測の事態を恐れているとも発言。「従業員たちは、働くためにはさらなる安全確保の必要性を感じている。そのことを、この会議で世間に訴えることができれば」とブラ拓のエリオ・ノボル・ミゾコシ理事も会議冒頭で語っている。
 ミシェレッチ市長は州警察に警備の強化を催促。市長によると、ロンドリーナ市の警察官の数は八〇年代と変わっておらず、「ロンドリーナ市の警察官を緊急増備する必要がある。それが犯罪に対する解決策」という。また、ロベルト・レキオン州知事(PMDB)と連絡をとり、市内の問題地域への対策援助を申し出た。さらに、非常対策は刑務所や留置場勤務の警官や警備会社の監視システムで代替できるだろうとし、「約八十人の警官が市内に配備可能」と語っている。