この「樹海」を読者が手にするころには、もう小泉純一郎首相が自民党総裁になっているはずである。それも―。予想以上の勝ちっぷりに皆が驚いているに違いない。総裁戦が始まったころ勝敗の見方は別れた。小泉優勢の声は高かったにしても、野中広務元幹事長ら反小泉派の抵抗が盛り上がった。が、結果的には候補の一本化も失敗▼最大派閥・橋本派の参院を率いる青木幹雄氏は、小泉支持を表明し野中氏らと真っ向から対立し、実質的には自主投票という亀裂まで生まれてしまった。堀内光雄氏の派閥も古賀誠氏が独自候補を主張して混乱し半ば分裂の危機を迎えてしまう。この派もほぼ全員が小泉支持に固まってしまったのは、皮肉といえば皮肉にすぎる。橋本派の議員数百票のうち半分は首相に回るし、もう派閥の力は無に等しい▼この総裁選挙をどう見るかは難しいけれども「派閥政治との訣別」ではないか。郵政や道路公団の民営化は小泉首相の政治的な信念なのは今は誰しもが承知している。ところが、これに反対する勢力は郵政族のドン・野中広務氏であり道路族を牛耳っているのも橋本派に多い。口に出してこそ言わないが、小泉首相の闘いの本音は「橋本派潰し」にあり、派閥政治の終焉を目指している。つまりは、利益誘導型の田中角栄政治との別れと見ていい▼小泉政治の批判は多い。しかし、郵政と道路の民営化がごく普通に語られるようになったのが「小泉政治」なのである。この総裁任期のうちに「民営化は実現」とも明言しているし、これからの小泉政権に期待したい。(遯)
03/09/20