9月23日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙】製薬、化粧品業界にとってアマゾンの植物の種子、昆虫、花は”金脈”を意味する。国立自然環境保護院(Ibama)の最近の試算によると、世界全体で年間約六百億ドルの金が生物略奪行為にからんで動く。この金額は武器取引(千億ドル)、麻薬密売(八百億ドル)に次いで多い。生物物質略奪行為を調査する団体「アマゾンリンク」の情報では、ブラジルの動物の内分泌液に関する特許が過去二十五年間に少なくとも十件以上、欧米や日本で登録されたという。
専門家が危ぐするのは、生物が非常に小さいためにカバンやポケットに隠し持つのが簡単で、多くの密輸業者が税関検査をやすやすとくぐり抜けて国境を越えてしまうことだ。医薬品や化粧品として製品化される生物はわずかだが、製品化される可能性は密輸で得る利益と同様、密輸業者を引き付けて止まない。
鎮痛効果があるとされる毒グモの毒一グラムは闇市場で四万ドルにもなると、相場の開示が略奪をさらにあおることを心配しながら、Ibamaのロペス環境保護局長はしぶしぶ説明した。「ブラジルはばく大な金額に上る損害を受けている」。
生物の密輸業者は主に欧米諸国と日本から観光客として南東部の空港から入国し、アマゾン地域に向かう。そこで多くの場合、自然と共生し、生物に詳しい貧しい地域住民を生物捕獲に利用する。「生物捕獲のために、子どもですらわずかな小遣いで雇う」と同局長は話す。「彼らは研究所の需要にこたえるというはっきりとした目的を持ち、ブラジルの法整備と監視体制の不足を知り尽くした密輸のプロなのだ」。
サンタカタリーナ連邦総合大学薬学部のカリスト教授によると、現在使用される医薬品の四〇%が自然の成分に基づいて開発されているという。世界中で使用される血圧降下剤の一つ『カプトプリル』はブラジルの毒蛇、ジャララッカの毒の成分をもとに開発された。毒の成分はブラジルの研究者が発見したが、研究費不足で薬品開発に結び付けることができず、結局それを開発して、特許を取得したのは米国の薬品会社だった。
生物略奪の概念は九二年の生物多様性に関する会議で登場した。現在のところ、生物特許に対する異議申し立てを根拠付けることができるWTOでは、生物略奪に関する法的規定がなされていない。
ブラジルには生物略奪対策のための特別法がなく、煩雑な手続きを要する国内遺伝子遺産保護法があるだけだ。〇一年八月に暫定措置法第二千百八十六号はブラジルの生物遺産保護を目的に公布されたが、同分野の研究を停滞させる結果も生み出している。
「同法は科学者に対する責め道具となった。科学調査を妨害するひどい官僚主義を生み出した」とサンパウロ総合大学のコリ生化学者は批判する。生物多様性に関するデータや見本を収集する研究機関や研究者は環境省が管轄する遺伝子財産管理審議会(CGEN)に前もって登録されなければならないと同法は規定している。さらに研究機関は土地所有者の許可と生物収集についての情報を示した研究計画書を提出しなければならない。
同法は第三十条で、同法の違反者に対して五千万レアルを上限とする罰金を科すことが可能な行政処分を規定している。しかし、問題は生物略奪に対してこの行政処分を適用することが不可能なことで、逮捕された密輸業者は保釈金を払って釈放される結果を多く生み出した。
こうした苦情の殺到に政府は、同法の改正案の策定を決めた。改正案は八月に完成する予定だったが、現在環境省で最終調整が行われている。
生物略奪と戦うには、監視員を増やし、外国が取得した特許の無効化を試みるだけでは十分ではない。研究者たちは外国人の前にブラジル人科学者が研究を完成させるために国内の科学研究を強化する必要があると指摘する。ブラジルの生物多様性の高い価値は常々話題に上るが、それを真剣に研究する計画が国内にはあったためしがない。また、多様な生物と共生する地域住民が持つ生物に関する知識・情報を細部に至るまで調査する必要性も研究者たちは指摘している。
取り締まりの点では、連邦警察が環境犯罪を専門的に捜査する二十七の警察署の創設を含む計画を七月に実施に移した。Ibamaは環境犯罪の告発を受け付ける、リーニャ・ベルデというフリーダイヤルサービスを継続している(0800・61・80・80、月曜-金曜)。