9月25日(木)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十四日】第五十八回国連総会の開会演説でルーラ大統領は二十三日、国連の中に飢餓対策委員会を設置するように提案した。また緊迫する国際情勢に対処するため、ブラジルを途上国代表として安保理の常任理事国に据えて国連の構造改革を行うことも提案した。イラク問題に対しては、国連加盟国はイラクの国家主権を認めるように要請した。
ルーラ大統領は国連総会の開会演説で、国連飢餓対策委員会の設置を提案した。アナン国連事務総長は大統領を招き二十四日、飢餓対策に関する具体的かつ即時実施が可能な詳細案を聞くことになった。
先進国首脳は二〇〇〇年、世界の極貧層の低減で合意をしたが、飢餓問題は忘れ去られ風化しようとしている。基金の設置はおろか予算の確保も眼中にないと、大統領は訴えた。飢餓対策は人類最大の挑戦であり、同時に人間らしさと平和の回復でもあるとした。
さらに大統領が出席した百九十一カ国代表を前に強調したのは、国際情勢で適切に対処するための国連の構造改革だ。ブラジルは途上国の立場から安保理常任理事国として活動し、構造改革をも完遂できる条件を備えた最適国とした。
国連の構造改革は国際政治の秩序が退廃しているいま、絶対不可欠だという。世界平和が脅かされている現在、安全保障理事会は九十カ国の常任理事国による確固たる機構体制に改革しなければならない。ブラジルは、その第一候補であると名乗り出た。
国連は政治力不信が問われ、国際平和の執行機関として存亡の機にあると、大統領は言明した。多国間協議による意志決定機関としての国連強化は、多くの政府首脳が考えていることだ。それをブラジルの音頭取りで実行するという。急を要する悲劇が中東だが、国連主導の多国間体制だけが問題を解決するとした。
大統領の演説要旨は、米政府一国主義を間接的に批判したアナン事務総長の開会演説に援護射撃をしたものであった。中東和平など世界平和へ向けて他人事のように傍観しているのではなく、全途上国は立ち上がり各自の役割を果たすように、大統領は訴えた。
ブラジルが要求するのは単なる国連の構造改革にとどまらず、国際紛争の解決に向けて安保理常任理事国が団結することだとしている。そのためには常任理事国の在り方そのものの改革から始める。拒否権は単なる拒否ではなく、独断専行の阻止も含まれる。国連は五十八年の歴史の中で、経済社会理事会や安保理常任理事会の下部機関はあるが、その機能が死に体化しつつあると辛らつに指摘した。
一方、ルーラ大統領演説への反応もある。飢餓対策委員会はよいが、すでに飢餓対策機関があるのに機能していない。新しい機関を設置するのは、屋上屋を架するようなもの。多国間協議もよい。欧州勢の共感を得る。安保理常任理事国入りは、海外派兵や国連経費負担の問題を考えているのか疑問という見方もある。