ホーム | 日系社会ニュース | ODAが足踏み状態―リオ州グアナバラ湾―浄化工事に大幅な遅れー関係者に広がる慎重論―大統領選挙中に資金の一部が消えた疑いも

ODAが足踏み状態―リオ州グアナバラ湾―浄化工事に大幅な遅れー関係者に広がる慎重論―大統領選挙中に資金の一部が消えた疑いも

9月25日(木)

 巨額の円借款が投じられている「リオ州グアナバラ湾環境浄化事業」が足踏み状態にある。九三年三月に公文が締結されたこの事業への円借款総額は三百十四億円余りで、州政府が工事の一部負担する形でスタート。しかし借款の貸し付け期限が切れたいまも、工事の進展は大幅に遅れている。背景には、期間中に政権交代が度重なったことや、州財政の悪化などの要因がある一方、昨年の大統領選挙中に資金の一部が消えたとの疑いが浮上している事情もある。日本政府は拡大路線を視野に入れた貸し付け延長に積極的な構えを見せるが、駐在外務省関係者の間には、白紙に戻すことを含めた見直しを求める声も上がっている。

 リオ市人口の約三分の一が居住する同市グァナバラ湾流域。低所得者層の集住地も多く下水道施設の未整備が懸念されてきた。生活廃水が直接海へ流入、水質汚染の原因となるためだ。
 この事業は住民衛生環境の改善と同湾への汚染物質流入防止を図ろうと始まったもので、下水処理場整備と下水管梁網を二本柱としている。
 関係者によると、政権交代のたびに入札の見直しが行われていることに加え、施工者が州政府の支払いを懸念し、工事の進捗状況は低迷している、という。
 こうした中で州議会は三月に調査委員会を発足。「すでに十億ドルが投下されているが浄化の効果は上がっていない」「八千から九千万レアルが無駄に使用されている」―などが確認されている。
 これを受けた議会は「リオ州環境保護基金」の予算削減法案を可決、そのため、事業継続に支障をきたす恐れも指摘されている。
 ただでさえ、州政府の財政は昨年五月の段階で三百億レアルを超える膨大な対外・対内債務を抱えており、担当工事負担分の費用捻出に苦労しているという台所事情もある。
 財政難に短期的な改善の見込みはないが、地元有力紙「グローボ」などの報道によると、州政府は「貧困対策基金」を別途設け、「州としての支払い分は必ず保証する」と明言している模様だ。ただ、本件の責任者である州副知事が来年のリオ市長選挙に出るとのうわさもあり、先行きは依然不透明なままだ。
 また、事業予算の一部が昨年の大統領選挙と絡んだ形で消えたとする問題がここにきて浮上。
 「ブラジル国民に対して良いイメージを与えることが円借款協力の目的だが、現状ではブラジル国内のダーティーな政治問題の中で報道されている」と話す外務省関係者もいる。
 円借款の貸付実行は今年七月二十五日をもって終了。しかし累計額は約二百十億円で、全額に百億円以上満たない。日本政府は貸し付け延長を容認する意向で、工事拡大のための調査も終えているという。
 これに対し同関係者の間で、「リオ州政治の動きに翻弄されていては本来の協力事業の効果を生み出せない。再検討が必要だ」とする慎重論が広がっており、今後一層の議論を呼びそうだ。