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コラム 樹海

 グアタパラ移住地の老人クラブ「長寿会」が、さきごろ同地とほんの少し離れた温泉に小旅行した。二泊三日だった▼会長の手記によれば、移住して四十年余り、ただがむしゃらに働いてきて、旅行はしたが、それはいつも仕事がらみだった。今回のように何の目的もない、のんびり湯に浸かるだけの二泊の旅は初めてだった。子供の頃、遠足前日は心躍りよく眠れなかったが、今回もそうだった。車中、そんなことを同行者たちに話したら、同感の様子だった―▼四十年余もの間のんびりできる旅行をしたことがない……。こうしたケースは少なくない。コチア青年世代の妻たちにも聞いたことがある。「子育てが一応終わるまで、旅行など思いもよらなかった」。農業者、その妻は、一日たりとも家を空けるのが難しかった。これに育児が加われば、なおさらである▼県連主催のふるさと巡りの旅は、必ず先没者慰霊法要を行う、変わった旅だが、いまや、たいへんな人気だ。一年二回実施しても、人が集まる。予定の定員をオーバーして、バスを増やすなどしている。若いころ、生活の基盤を築くのに懸命だったころは、思いもよらなかった▼堰を切ったように、という表現があるが、いま、特に営農から完全に解放された世代は、のんびり楽しめて、先達の先没者に焼香がかなう旅にどっと応募するのだ▼グアタパラの老クの人たちの旅は、同じところで営農して来た〃同士〃と温泉宿で初めてゆっくり談笑できた、とある。旅はすべし、である。      (神)

03/09/26