9月27日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十六日】メキシコ訪問を終えたルーラ大統領は二十五日、キューバ訪問の途に就いた。国際人権団体からキューバ国内に服役している政治犯釈放のために協力要請を受けたが、大統領は首脳間で他国の国内問題に干渉するのは慣例として妥当でないと断った。両国の経済的発展とカストロ首相の表敬訪問が目的であって、政治問題には一切触れない予定であるとした。
PT政権の対外政策で最も注目されるキューバ外交が動き出し二十六日正午、ハバナ空港へ大統領は到着した。米政府と四十年間、国交を断絶しているキューバを訪問するのは、米国の反応を試す意味合いもあるようだ。米政府を刺激せずにキューバと通商関係を結び、中南米地域のまとめ役としてのブラジルをアピールする目的もある。
カストロ政府から迫害され亡命した在米キューバ人政治家や人権団体から協力要請や圧力などがあったが、政治犯釈放などの国内問題には一切関与しないと、大統領は断った。最近カストロ政権が国際社会からの孤立化を深めていることで、キューバとの交渉の窓口を確保しておく必要があると、大統領は感じていた。
キューバ訪問は友人訪問ではなく両国の首脳会談であり、他国の政治に意見を述べるのは外交儀礼に反すると述べた。キューバ政府の政治形態については、機会あるごとに何度も語り著述もあり今いうことはないとした。労働者党(PT)とキューバ共産党とは、全く別物だというのだ。
ブラジルは一九八五年以来、キューバと友好関係を保っており国内政治について語るのは時期尚早という。国内問題なら、ブラジルにも山積している。外国の首脳にブラジルの国内問題で、余計なせっかいを焼いて欲しくないと、大統領はいう。
二十年にわたるルーラ・カストロの友情関係が、キューバの人権抑圧問題で大統領の口を封じている。都合で使い分ける友情は、ブラジル政府にとって不都合ではないかという異論もある。キューバ政府の報道管制で拘束され、孤島の収容所に監禁されている新聞記者三十人の釈放のため、大統領に交渉の窓口になってくれという依頼があった。
「もし大統領閣下が切なる陳情に一顧だにしないのなら、国際舞台でブラジルの誠意は失墜する」というのだ。懇請とも脅迫とも取れる要請の影響を、外務省は分析している。大統領は、政治工作よりも経済協力のほうが効果があるとみている。キューバへの経済的てこ入れでラテン・アメリカへの参加を促すことが、訪問の目的とした。
キューバ向け輸出に対する産業開発銀行(BNDES)の融資は、まだ検討中だ。キューバ訪問前の四億レアルは確認できないが、二億レアルは可能らしい。キューバ訪問ミッションにはジルセウ官房長官も加わり、亡命時代にキューバでゲリラ戦の訓練を受けた当時をしのんだ。