9月30日(火)
「よりよい明日を 世界の人々に」――。新たなスローガンのもと、日本外務省の外郭団体、特殊法人「国際協力事業団(JICA)」があす一日、特殊法人等整理合理化計画を受けて、独立行政法人「国際協力機構(ローマ字表記はそのまま)」に改編される。これに伴い、JICA理事長に緒方貞子前国連難民高等弁護官が就任。経営形態に企業会計制度を導入し、機構内の情報を公開、市民参加を積極的に推進するという。ブラジルでは来年三月までにベレン支所廃止などの動きがある。二十九日、JICAブラジル事務所の松谷広志所長がサンパウロ支所で語った。
JICAは一九七四年、国際協力事業団法に基づき、特殊法人として設立されたが、二〇〇一年末、閣僚会議で特殊法人整理合法化計画が決定された。翌〇二年、臨時国会でJICAを独立行政法人化する「独立行政法人国際協力機構法案」が可決され、今年十月から独立行政法人として新たなスタートを切ることになった。
改編による主な変更点
事業団から機構への改編で生じる変更点は、(一)平和構築への取り組みを明確化、目的規定に「復興」を追加(二)青年海外協力隊、シニア海外ボランティアの各事業、草の根技術協力等をまとめて「国民等の協力活動」と規定(三)開発投融資事業、移住者送出事業、入植地事業、移住融資事業を廃止――など。(三)については、現在、ブラジル内で進行中の案件はない。
機構として今後、取り組む改革方針は、(a)成果重視・効率性――海外等協力現場への権限委譲、専門家派遣期間の短縮化、民間人材の活用など(b)透明性・説明責任――事前・中間・事後の評価徹底、第三者評価の拡充、財務状況の公開、協力事業の進捗状況の公開など(c)市民参加――NGO(非政府団体)の提案に基づく草の根技術協力への積極的支援、ボランティア事業の再編など(d)平和構築支援――紛争地域支援の経験を生かし、復興支援事業を強化――が主体。
来年にベレン支所廃止
ブラジル内の取り組みについては二十九日、聖支所で会見があり、松谷事務所長が「JICA内部で政策は外務省、事業の実施は機構が行なうように役割分担される。対外的に変更はない」と説明。政府開発援助(ODA)については、大使館を中心としたODAタスク(研究チーム)に参画し、日伯間の事業調整機能や事業評価制度の強化をはかっていくという。
ただし、〇四年三月までにベレン支所の廃止を予定しており、代替にアマゾン環境分野のプログラムオフィスを存続させる予定。同支所管轄の経理や日系社会ボランティア事業などの連絡業務はブラジル事務所が担当する。松谷事務所長は、「ベレン支所管轄で現在進行中の事業はそのまま継続するし、今後、新たな事業が計画される限り、プログラムオフィスがなくなることはない」と断言している。
県人会と直接共同事業も
そのほか、改編後はブラジル政府を介さなくても、直接、JICAと交渉ができるため、「改編の影響が出るとしたら、財政難の関係で大型調査が減少し、その代わりにNGOとの細かい事業が増えるだろう」と予想。すでに草の根協力第一号案件として、日本のNGO「ハンズ」とアマゾナス州マデイラ川流域の村、マニコレー(マナウスとポルト・ヴェーリョの中間地点)、JICAの三位一体で「アマゾン地域保健強化プロジェクト」を今年末までに開始、二―三年で保健婦育成、保健所開設など保健衛生システムの構築を手掛けていく計画がほぼ決定している。松谷事務所長は、「今後は県人会、姉妹都市、ブラジルの民間団体と直接、事業に取り組める」と期待するも、「ODA事業に関しては、ここ数年減り続けている。環境分野を一つの柱として、減少に歯止めをかけたい」と険しい表情を見せていた。
百年祭をバックアップ
聖支所では、日系社会協力事業などに積極的に取り組む方針で、小松雹玄支所長は「五年後の日本移民百周年に向けて、日系団体との連絡を緊密にし、バックアップ体制などを協議したい」と意欲的。「百周年記念祭典協会が何を行なうのか、早めに教えてくれれば、総領事館と協力して準備をすすめていける」とし、「年内には何か決まるのでは、と期待している」と語っていた。