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TAM航空 裸足の社長〃奮闘記〃=利益はにじみ出る=もうかる体質づくりを

10月2日(木)

 【スセッソ誌】大手企業社長の訓話は「創られた神話」といわれ、のせたものが多い。しかし、小型機を自ら操縦し率先して最後まで下働きをしながらTAM航空を築き上げたロリン・アマロ氏の裸足の奮闘記は素朴な真実に満ちている。

 ロリン・アマロ氏は二〇〇一年七月、ヘリ事故で死亡した。著書「ブラジル人の夢」は、同氏の言行録で独立を志す人の教科書として今日も読まれている。
 【金もうけの最短距離は、見えない損の防止】言い訳する奴は、許すだけの価値もない。顧客のために費やすのは、経費ではなく投資だ。成功の秘訣は、顧客の信頼の蓄積。ぼろもうけは長続きしないし、短命だ。バブルは邪道、何かが狂っているのだ。利益はにじみ出るのが理想。利益がにじみ出るような会社の体質づくりが会社経営の秘訣。
 【バカ正直ではチャンスは分からない。チャンスは普段の準備と実行力が必要】チャンスに関するマニュアルはない。顧客獲得は特別に何かをするのではなく、礼儀正しく真心を込めたあいさつから始まる。 
 【技術革新は経営の基本だが、心の温かさを忘れてはいけない】TAMは衛星管理システム導入により、チェックインに二分かかったのが十秒に短縮された。
 敏速な応対は良いが、職員が顧客の顔も見ないであいさつするのに驚いて注意した。これは重大だ。
 【独創力は顧客が教える】アマロ氏は、BCN銀行の雇われパイロットだった。ゴイアス州アラグアイア地方に銀行が造成した農場へ、地主らを送迎していた。
 アマロ氏は一九六〇年、同銀行の融資でセスナを購入。家族をサンパウロ市に居住させ同地方に農場を所有する地主らの送迎を始めた。地主は一人だけの送迎が高価な旅になるので、乗合送迎を希望していた。アマロ氏は無線通信機を十二台購入し、十二人の地主に渡した。送迎が必要なときは、連絡するように頼んだ。アマロ氏のTAM創業だ。 
 また自家用機所有の地主が、ほとんど使わず格納しているのに気づいた。アマロ氏は小型機九機を賃借りし、パイロットも雇った。
 【計画はゆっくり練る】決定したら即時実行。社員は全員が、社長のつもりで働く。ただしアマロが、現実の社長であることを忘れないように。大切な決断は、多数の人(相談役)の意見を聞く。最後に自分の勘で決める。常に勘を磨く。
 【一般大衆から離れると、消費者心理にうとくなる】アマロ氏は、サンパウロ州ペレイラ・バレット市の草ぶきでヤシの幹で囲った家に生まれた。いつも庶民の中で暮らした。どんなに会社が好調でも、社長が庶民や現場から離れたら社会の動きや、仕事の流れに疎くなるという。
 【何もしないより、危険を冒したほうが良い】TAMは一九九〇年、倒産前夜にあった。犬も歩けば棒に当たる。行動すれば、解決策に出会う。水を沸騰させるには、火を九十九度で消してはいけない。最後の一度が、沸騰させるために最も大切なひと押しなのだ。
 【政府に頼らない】政府と航空会社の間には、いつも癒着関係がある。政府の後ろ盾に頼ると足腰の弱い企業に育つ。TAMは政府の援助を全て断り、顧客とサービスにかけた。
 【人間関係が取引に優先する】先ず行為という貸しをつくる。その後に続く取引が円滑に運ぶための先行投資だ。貸しを断れば相手とその情報、商品をも拒絶したのだ。
 【本当の資本金は顧客だ】企業を支えているのは、資金ではなく顧客の信頼だ。顧客を粗末にする者は、企業から追放した方がよい。