10月2日(木)
十一月九日投票が濃厚となった衆院総選挙。在外選挙制度が実現されて以来、三度目の選挙となるが、登録者数の伸び悩みに加え、投票手続きの煩雑さ、政党・候補者に関する情報不足などから、鳴り物入りで始まった制度も十二分に活用されているとはいえない状況にある。これまでは好奇心から投票した層も、手間の割にはメリットがみえてこないという現実を認識し始めているようだ。
サンパウロ総領事館管内の在外選挙人登録者はこれまでの報道の通り、現在一万三千人余り。同管内の日本国籍所有者は昨年十月時点で約五万八千人が確認されている。この二つの数字を元に取得率を割り出せば、二三%。すなわち四・五人に一人が投票権を持っている。
二年前、参院選挙の際の調査で明らかになった在外邦人全体の取得率は一三%だったことを顧みれば、同管内の数字は比較的良好と見られるが低迷は否めないところだ。
他総領事館の状況はどうだろうか。
クリチーバ総領事館管内には日本国籍保有者が推定で三千五百から四千人ほどいる。うち在外選挙権を持つ人は約七百三十人で、割合にすればサンパウロのそれを下回る。
郵便投票、公館投票の併用が認められている同総領事館では前回参院選のとき、土・日曜日をはさんで計九日間対応。当時の有権者七百七人のうち公館投票した人の数は百三十人という結果だった。
「ロンドリーナ、マリンガなど日本人居住者の多いのは北パラナ地方だが、クリチーバからは遠く、直接投票を希望しても現実は困難。近くに投票所があればもっと興味を示してもらえるはずですが」と同総領事館担当者は話す。
一方、ベレン総領事館の場合、日本国籍保有者は約千八百人で、これまでにおよそ五百人(二八%)が在外選挙人登録を済ませている。これはサンパウロの数字を超える取得率だ。
ただ、同総領事館によると、「管内の移住者には帰化人が目立つ」という。背景には、日系人を郡長に選出するため、ブラジルの選挙権を得る必要があった過去がある。
「組合に帰化しろ、と命令されたので従っただけ。在外選挙制度が実現されても参加できない、いまの身分はさびしい限り」などと漏らす帰化人も少なくないそうだ。
パラー州は日本の国土の三倍に当たる面積をもつ。日系移住地は各地に点在し、在外選挙人獲得のための出張サービスが効率よくはいかない事情がある。
また、公館投票であれば投票したいという層でも、総領事館まで出かけるのは困難。こうした理由が在外選挙への関心の薄さにつながっている、と同総領事館ではみている。