いま多くの国が腐心しているものに高齢者対策がある。医学の発達、食料事情など生活環境の向上でお年寄りの寿命が伸びた。ひと口でいうなら七十、八十はハナタレ小僧。「人生僅か五十年」も死語となり、「人生僅か百年」の日も近かろう▼海の向こう日本の話だが、「父母に孝に」…の時代は、はるか遠のき「父母は重荷」の世に変わりつつある。とくに痴呆症の親が〃重荷に小付〃となり、虐待する例がふえているそうだ。そんな現実の中で高齢者への虐待を防ぐ法律は完備されていない。ひどいのになると親の惚けをよいことに資産分捕りに出る不逞の輩もいる。欧米先進国では法律で高齢者虐待を禁じているのに日本ではそれすらない。政治家の無関心さは如何ともしがたい▼当地ブラジルはどうか。先日、ルーラ大統領の署名が終わり、『高齢者憲章』が公布される運びとなった。議員立法と呼べるものだが、それにしても長丁場だった。上程してから七年の歳月を費やしている。これの実施に伴って高齢者に対する人々の意識向上は、より密度を増すに違いない▼『憲章』の詳細は官報発表を待つ以外にないが、骨格はすでに報じられている。それによると高齢者の健康保険の掛け金調整(値上げ)を禁じている。また高齢者への暴力、残虐行為、抑圧、差別、介護放棄は許されない。『憲章』違反に対する罰則も厳しい▼〃弱者〃ではあるけれど、まわりに迷惑かけずに生きて行きたい…。が多数お年寄りの本音だと思えるのだが。 (田)
03/10/08