10月10日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙九日】刑務所職員による服役者拷問の実態調査を行った国連人権委アスマ・ジャハンジル弁務官は八日、ブラジル司法府への国連指導を提案した。同弁務官と対談したバストス法相は、司法制度が国民の希望するものでないことを認めた。コレイア最高裁長官は、ルーラ大統領の司法府に対する作為がなせる業だとし、国連の司法査察は国家主権への侵害と理解していると述べた。
国連弁務官は報告書作成の最終段階に至り、刑務所の服役者処遇に国連の監視委員を派遣して、ブラジル司法制度の見直しをさせることを提案した。この提案は、行政府と司法府の間に新たな波紋を呼ぶことになりそうだ。
最高裁(STF)と高等裁(STJ)、労働高等裁(TST)の三長官は一斉に国際機関の司法査察に反発した。大統領と法相が弁務官をプラナウト宮に招き、提案に前向きに反応したことで、コレイア長官は露骨に不快感を表した。
国連弁務官がブラジルの司法制度の中に割り込み変則的査察を行った報告書を、大統領が正当なものとして取り扱ったのが心外だと、最高裁長官は憤慨した。さらに長官は、弁務官はブラジルの司法制度について無知であり法制機構の成り立ちも知らないから、報告書は単なる人騒がせなものに過ぎないと批評した。
TSTのファウスト長官は、司法府は国連査察を容認しないし報告書も認めないと反ばくした。ブラジルは、他人によって勝手にかき回されているイラクではないし、国連の属国でもないと抗議した。
高等裁のナーヴェス長官は国連査察委員の派遣が内政干渉であるのに、政府が何ら反応しないのは奇異だとした。ブラジルの司法制度に欠陥があることは認めるが、できる範囲で必要な手は打っているという。政府はこの機会を、司法府攻撃の材料にしようとしていると批判した。
弁務官は最後の週に国内六大都市の刑務所を訪問し、殺人罪の裁判制度が非現実的で悠長だと指摘した。殺人罪に対する二十年の時効廃止も提案した。パラー州では時効が成立すると、また殺し屋稼業へ舞い戻るケースが多いという。これは事件を、迷宮入りさせる法令だとみている。
ブラジルの警察に生殺与奪の権があるのも憂慮すべき問題と、弁務官は指摘した。警察の在り方の見直しが必要だと提言した。警察官が殺人恐喝を行い犠牲者の母親を辱めても、連邦令は監察的役割を果たすだけで国民の権利擁護には何ら効力がないとした。
大統領は司法制度の欠陥を認め、政権就任当初から司法府をブラック・ボックスと呼んでいたと述べた。政府は人権侵害を、連邦政府で一括処理する法令の早期表決を急いでいることを、弁務官に告げた。しかし総元締めの連邦警察は、予算不足で家賃や電気水道代の滞納に追われ、パスポートの印刷も滞っている。