〇一年十月六日。コルコヴァードのキリストが〝古希〟を迎えたその日だった。
画家フラヴィオ・シロー宅をリオに訪ねた。寝室の窓に逆光のキリスト。路上からサンバ。そんな空気の中に一枚の絵があった。
「ヴァイオリンのある静物画」―。第一回「聖美会」展(一九五二)で一席を得た作品だ。現在開催される「サロン文協」展の前身となった同展を経てフラヴィオはパリへ。爾来、リオとの往復生活を送る。
二八年札幌生まれ。四歳でトメアスに移住。「つららの味もアマゾンの砂塵を含む熱風も自分の中にある」画家のパリの住処は十四世紀の邸宅である。
来月八日までエウロッパ通り六五五の画廊で個展中だが、そこにみるのは、この画家の人生のダイナミズムであり、日系美術史の豊穣さである。 (大)
03/10/14