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亜国 日系とスペイン系交流=沖縄・ガリシア月間=日系作家マキシミリアーノ・マタヨシさん=スペイン二世と公開対談=雑誌でも4頁の特集

10月16日(木)

 中南米スペイン語圏諸国における新人作家の登竜門とされている「プレミオ・プリメーラ・ノヴェーラ」の昨年度受賞作品『ガイジンーアルゼンチン移住の冒険』を著した日系二世作家、マキシミリアーノ・マタヨシさんの公開対談が九月六日ブエノスアイレス市内のガリシアセンター内の劇場で行われた。これは八月中旬から開かれていた『沖縄・ガリシア月間』の目玉イベントとして開かれたもので、日系人約一割を含む約三百五十人の聴衆を集めた。これまで、文化面での活躍が少ないとされていた亜国日系社会に新たな光明が射し始めているようだ。


 対談相手となったのは現地主要紙「ラ・ナシオン」の著名ジャーナリスト、ホルヘ・フェルナンデス・ディアス記者(スペイン系二世)。ガリシア地方から移住した母方の歴史をベ―スにした小説『ママ』を著し、第八版を超えるベストセラーとなっている。
 『沖縄・ガリシア移住コミュニティーの対話』と銘打たれたこの対談では、ホルヘ氏が進行役を務めながら、マタヨシ氏とルーツ、小説、親子間の対話などのテーマについて語りあうスタイルで行われた。
 二世である二人の親世代の移住は戦争の惨禍がきっかけになったものも多く、その背景に話題が及ぶと会場からは嗚咽の声も聞こえた、と日本大使館文化センターの石川輝行書記官は会場の熱気を伝える。
 マタヨシ氏は「同賞受賞の際、(小説の主人公となった)父親に何も言えなかったが、『息子よ、よくやった』と声をかけられた。それで十分だった」というエピソードを披露。寡黙なイメージの強い日本人の対話に文化の違いを見いだし、感銘を受けた来場者の姿もあったという。
 この公開対談と月間の様子は、両氏の本紹介や移民である親への思いなどが綴られた記事と共に、雑誌『NOTICIAS(○三年九月号)』に四ページを割いて、大きく取り上げられている。
 同書記官は「現在アルゼンチン国内で、自分たちのことを〃船の子供たち〃と表現することに見られるように、ルーツの見直しが行われている風潮にある」と分析し、移住をテーマにした著作が発表され始めていることにも触れる。
 マタヨシ氏の存在を「文化系の日系人が少ないなか、スペイン語でユーモアを交えながら、そのルーツを語ることのできる存在」と評価し、同国での活躍に大きな期待をかける。
 マタヨシ氏は十月二十三日から、市内レコレッタ文化センターで開催される日本文化フェスティバルでの講演が予定されている。

画期的な異文化交流 イタリア大使館からも

 「沖縄ガリシア月間」は八月中旬から、日本、スペイン両大使館、在亜沖縄県人会連合会、ガリシア協会共催で約一カ月間開催。
 稲嶺恵一沖縄県知事がガリシア協会を表敬訪問、両団体幹部の懇談会、沖連主催の舞踊祭でガリシア協会が友情出演するなど様々な交流事業が行われた。
 沖縄とガリシア(スペイン北部)。アルゼンチンにおけるスペイン系移民はその多数を占め、ガリシア地方出身者はその約七割。同国での沖縄出身者も日本移民のなかでほぼ同じ割合を占め、移民を多く送りだした共通項がある。
 月間開催に奔走した石川書記官は「ホルヘ氏とマタヨシ氏との公開対談のアイデアがきっかけとなった」とその経緯を説明する。
 「スペイン大使館を通じて、交渉を開始した。最初はガリシア協会側もこちらの意図を図りかねていた様子だった。ゴッドファーザーみたいな迫力のある幹部もいて向こう側の流儀も分からなかった」と交渉当初の苦労を語る。
 第二回の計画も始まっているうえ、「イタリア大使館からも同じようなイベントの話が持ちかけられている」と同書記官は明かす。
 新しい異文化交流の輪が広がり始めたアルゼンチン。そのきっかけとなった日系社会の活躍を期待したい。