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コラム 樹海

 一カ月ほど前、米国サンフランシスコの日本町(ここでは日本人町とは言わない)に高齢者介護施設「こころ」が完成、披露された。サンパウロとかなり事情が異なるので、参考に紹介したい。十年前から計画されており、思い立ってすぐ建設、ではなかった▼実現させたのは十一の宗教団体の連合体・日米宗教連盟。土地は市再開発局から購入、総工費一千四百万ドル、連盟が中心となって日系団体や個人の寄付を募った▼建物は家具や冷暖房のついた六階建、一ベッドルームの部屋が五十四。入居者の対象は、歩行できる、できないにかかわらず、服薬、入浴、食事などで助けを必要とする人。二十四時間態勢で、三回の食事の提供、掃除、介護のサービスが受けられるという。肝心の入居費用だが、利用者の所得によって一律でないそうだ▼施設「こころ」は、いわゆる特別養護老人施設である。絶対必要であるという背景があったと思われる▼ブラジル日系社会でも宗教団体の一部が個別に老人福祉の分野で活動している。連合体は〃祭り〃や〃先祖供養〃で共同歩調をとるが、高齢者福祉活動は、専門団体に委ねているのが実状だ▼ブラジルの場合も、近年関心事は特養である。実際、健常高齢者は家族と居たいし、居る。現に核家族状態は多くはない。ホームへの入居が考慮されるのは、介護が要るようになってからだ。その意味で、この分野の事業を推進している援協、救済会の存在は改めていうまでもなく貴重である。(神)

03/10/17