日本人は気が速いというか何事にも準備が肝心と心得ている節が大いに強い。愛知万博にしてもまだ一年半も先なのにブラジルが参加を決めてくれないと心配する。が、南米の大国にとっては何事にもゆったりが決まりなのであり、急ぐの感覚は驚くほどに希薄なのが常なのである。日本の大使館などは気をもんでいるらしいけれども「参加する」と見ていい▼これは国際的な行事に限ったことではない。まだ十月なのに来年の正月に使うお節料理の話題が新聞や雑誌の話題になるのも日本的な楽しみというべきかもしれない。東京の日本橋にあるデパート・三越が百万円もするお節を売り出すのニュースが華々しく報道される。百万石の都・金沢の老舗の料理人が腕を振るうのだそうながら蒸しアワビなど三十四点が重箱に詰められるそうだ▼来年の十二支は申だが、これもどこかの神社で製作が始まったの噂が記事になり賑やかになる。当然、門松などの手配にも心しなくてはなるまいし年末ともなると日本は忙しい。お正月に餅は欠かせないからそっちの方の準備も進めなくてはなるまい。家の隅々までの大掃除も待っているしと気が遠くなりそうなほどにやるべきことが多い。こうした長い生活習慣から「万博も早く」の発想が生まれてくるのに違いない▼言わば農耕民族としての考え方が前面に飛び出してくるのではないか。ところが白人社会は狩猟に重きを置いてきた歴史を持つ民族でもあり、用意万端整えて出発の心構えには薄い。このギャップが日伯に「溝」を造っているような気もする。 (遯)
03/10/23