10月24日(金)
再々浮上するか、日伯学園構想――。二十二日午後二時から文協で、日伯学園検討委員会(松尾治委員長)は記者会見を開き、現在までの活動報告をした。
七月に再結成された同委員会は、今年三月までの前委員会が提言した『日伯学園構想に関する報告と提言―「小中高案」と「大学案」の二案』をもとに、何らかの形で百周年記念事業案として提案するための調査活動を行ってきた。
新委員会メンバーは十三人で、前メンバーから谷広海氏が今回も副委員長に、岡野脩平氏は今回も委員になった。新メンバーとして小原彰退役少将、池田昭博(エコノミスト)、本田タケシ社長(サンスイ)、ゴヤ・ハルミ(文協理事)、中川響子医師、小林ヴィクトル会頭(青年商工会議所)、ワク・マウリシオ会長(アセベックス)、以下文協青年部の横溝オズワルド、佐々木テツオ、山内エリカの十氏が選ばれた。
同時に、日ポ両語合わせて四千部が印刷・配布された同提言書に同封されたアンケートの集計結果も公表された。回答者は百二十六人で、五十~六十九歳代が七十九人で全体の約六割を占め、ポ語版からの回答は二~三割にとどまった。
同学園建設の必要性に「賛成」と答えた人が九割、「反対」は七・一%だった。「小中高校案」にも「大学案」にも同率四一・三%の支持があり、選択の難しさを改めて浮きぼりにした。
「小中高案」に対する意見としては、「スペイン語、英語、日本語を必修科目にし、通常の月謝の半額程度で履修できる公認校がよい」「道徳を履修科目に入れた方がよい」「そろばん、踊り、演劇などを通して日本文化が学べるようにしたらよい」などが書き込まれていた。
「大学案」には「日本語教育の専門家を育成する学部を作ったほうがよい」「地方に建設した方が良い教育環境が得られる」という意見もあった。
その他、「日系芸術家の美術館を作る」「デカセギ帰国子弟を支援する教育センターや日系老人介護施設を作った方がよい」「スポーツ交流促進のためにサッカー場を作ったほうがよい」「既存の日系校を支援すべき」「日本文化普及のために日系TV局を作り、全伯に放映する」などの意見が出された。
ただし、四千冊配られたにも関わらず、百二十六人からしか回答されなかったことから、今件への関心が低迷している感を拭えない。同委員会は「これだけでは判断できない。より若者の声を聞くべき」とし、文協青年部、青年会議所、Abjica、アセベックスなどに協力を依頼し、三百人ほどにEメールで追加アンケート調査を行う予定。
その際、従来の「小中高校案」「大学案」に加えて、デカセギ帰国子弟への積極的対応を主眼とする「教育支援センター」を選択肢に加えることも検討しているとのこと。既存日系校への日本語教育支援やバイカルチャー教育メソッドの確立など、新しい形での教育のあり方を問いかけるプロジェクトとして注目される。その場合、同委員会だけでなく、文協全体として取組む可能性も松尾委員長は示唆した。
アンケート結果をもとに、現構想を組みなおし、「十二月十五日までに百周年祭典協会へ、文協からの記念事業案として提案するつもりだ」との意向を、松尾委員長は明らかにした。