10月25日(土)
「海賊版製作はブラジルの文化である」―。こう話すのは、今年1月、文化大臣に任命された歌手のジウベルト・ジルさん。提携を求めるNGO団体や、憲法の部分修正案を出す政治家たち、予算をくれと叫ぶ映画制作者たち、彼を一目見ようと集まる作家たち。これらの人々の応対に忙しい日々を送るジル文化相は最近、エスタード紙の取材を受け、これからの文化企画について語った。
「就任当時の一月には、文化企画について何も語ることはできなかったが、今ではいくらか説明できる」とジル文化相は話す。
ジル大臣は、文化省が庶民的な文化の先頭に立つような姿勢をとるべきだと考えている。大臣にとって、海賊版のCDなどは警察問題ではないという。「確かに海賊版製作は、正規の仕事を減らす。しかし、その一方で不正規の仕事もつくる。単なる商標登録違反や著作権侵害というような問題ではない。かといって、海賊版業者を取締るといった警察の問題でもない。海賊版製作はそれ以前のものである。すでにブラジルの根強い文化になっているのだ」。
ジル大臣自身が歌手で、彼のアルバムの海賊版販売の被害を受けているだけに、意外な発言だと考える人もいるだろう。だが、「数日後には、自分の歌をインターネットから無料でダウンロードできるようにするつもりだ」と自ら述べていた。
PT(労働者党)政府の〃異物〃として入ったジル大臣は、やっとPTの党員たちから認められたと話す。ジョゼ・ジルセウ大統領府官房長官、アントニオ・パロッシ財務相、そしてルーラ大統領などが、ジル大臣に味方してくれているという。
「特にジルセウ長官は、文化面での問題に強く興味を示している。ルーラ大統領は、政府は文化関係の問題に対して特別な政策をとらなければならない、と考えている。税制改革のようにすべきではないことをよく理解されている」と語る。
政府の文化面での新しいプロジェクトは、次の通り。
(1)国内のさまざまな都市に、20の文化センターを建設する。建築家ジョアン・フィゲイラス・リーマ氏(通称レレー)のデザインで、初期の建築費は2千万レアルとされている。
(2)2004年の長編映画制作費を保証する。石油公社ペトロブラスやBR配給会社のような強力なスポンサーの映画投資が激減しているため、映画制作者らは文化省に資金援助を訴えていた。
この(2)の問題に対してジル大臣は、「一部の人々は、映画の制作本数が少なすぎると文句を言っているようだが、それは間違っている。映画は多く制作されている」と指摘。「昨年、スポンサー会社が、今年の予算が発表される前に映画制作費を出してしまったのが原因だ」と説明している。
映画問題の解決策として、ジル大臣は、ペトロブラスが臨時に長編映画だけを今年12月まで資金援助すると声明した。「政府からも10~15本の映画の制作費を出す。問題は、来年以降の映画生産の需要を保証すること。だが、そのために映画制作が中断したというのは事実ではない」と締めくくっている。(エスタード・デ・サンパウロ紙)