10月25日(土)
米国のカリフォルニア州に、情報の人種別分類を禁じる法案(カリフォルニア州法案五四号)がある。日系を含むアジア・太平洋系の市民がこの法案に反対している。
法案五四号は「公共教育や雇用、公的契約を結ぶ際に、州政府は個人をその人種、民族、肌の色、または国家的ルーツによって類別してはならない」と定めている。至極もっともな法案だと思われるのだが、反対派(教育や医療分野の関係者)は「情報禁止令だ」と批判する。その理由は「この法案が可決されれば、州政府、地方自治体政府ともに人種、民族に基づいた情報収集ができなくなる」。
米国政府人権委員会の元メンバー、イボンヌ・リーさん。「全米の人口からみると、アジア・太平洋系米国人が占める割合はわずか四%だが、全米の肝炎の発症例でアジア系が占める割合は六〇%にも上る。このような人種別データがなければ、州政府や自治体政府は、コミュニティの健康、教育、経済、人権擁護の状況を知ることができない」。
アジア・太平洋系米人健康フォーラム所属のアリス・チェン医師。「法案は、アジア・太平洋系米国人の保健を脅かす。アジアで発生したSARSは『アジア系の病気』と思われたが、州の人種、民族別データによると、感染が疑われる例が圧倒的に多かったのは、白人だということがわかった。この情報がなければ、医療従事者はアジア系の健康管理に気をとられていただろう」。
法案は、医療分野のみならず、犯罪防止にも影響をもたらすという。カリフォルニア大学バークレイ校の学生、カミール・カウア・パンヌさん(同校のシク教徒学生協会代表)は「法案は特定集団をねらった憎悪犯罪防止に影響を与える。大学構内を歩くときに身の危険を感じたり、実際に嫌がらせを受けたりする女性が日々絶えない。一体、どのような女性が、なぜ、不安を感じるのか。もし法案が成立すれば、このような情報は手に入らなくなり、犯罪の予防ができなくなる」。
全米アジア太平洋系米人法律協会のカレン・ナラサキさん(日系)は「アジア・太平洋系市民の三分の一がカリフォルニア州に住んでいる。アジア・太平洋系を含む多様な人種・民族的バックグラウンドを持つ米国市民の情報収集を阻む同法案が可決されれば、連邦上下院議員はそれぞれのコミュニティが必要としていることが把握できなくなり、立法にも大きな影響を与える」と語っている。(「北米毎日」紙から)
〃移民国〃ならではの話。移民、およびその子孫は当該国の永住者、国民として平等であるべき――これは建前か。さて、ブラジルでは?