10月26日(火)
広島、長崎両県が国の補助を受けて実施している在南米被爆者健康診断が二十五日、サンパウロ市リベルダーデ区の援協診療所で始まった。十回目となる今回は、従来の一般検査に加え、レントゲンや超音波などによる精密検査も実施され、健診事業が大きく前進した。
初日のこの日、午前と午後合わせて約三十人が来院。派遣医師団(山岡義文団長)の診察を受けた。交通費が助成されたこともあり、ベレーン市(PA)、ポルトアレグレ市(RS)など遠隔地から足を運んだ被爆者もいた。
医師団の派遣は今年一月から二月にかけても行われた。在ブラジル原爆被爆者協会(森田隆会長)が治療を伴わない健診を拒否したため、健康管理の講演にとどまっていた。
一連の検査は事前に済ませており、援協の医師から診断結果を受け取った後、派遣医師の待つ診察室に向かった。検査項目が増えたことで、健診内容も充実してきたようだ。
日本に留学中、広島で被爆した岡田良子さん(二世、七九)=サンパウロ市=は「これまでは問診だけで終わり不安だった。今回は丁寧に診てもらったので安心した」と話した。
被爆者の健康状態について、山岡団長(広島赤十字・原爆病院消化器科部長)は「ブラジルに特有の疾患はみられない。日本と同様に高血圧など成人病が多い」と述べた。
同行した広島、長崎両県庁の職員は別室で、在外被爆者の支援事業について、個別に相談を受け付けた。居住国での被爆者手帳の取得について、島村恵美子長崎県福祉保健部原爆被爆者対策課医療班係長は「今のところ、渡日することが前提。法律が改正されない限りはどうしようもありません」と言うのにとどまった。
医師団は二十九日から二班に分かれて、リオデジャネイロ(RJ)、クチリーバ(PR)、マリリア(SP)に向かい、来月三日に帰国の途に付く。期間中、百五人が受診を希望している。