10月26日(火)
全国知事会会長を務める梶原拓・岐阜県知事は海外日系人協会会長として二十五日午後二時から文協小講堂で、「日本と日系社会との関わり」をテーマに講演会を行った。日本語は日本と日系社会の共通財産として大事にしていくことが重要とし、ローカル・トゥ・ローカル(地方から地方へ)、Eラーニング(インターネットを通した学習)など、日伯交流の新しいアイデアを紹介した。熱気に満ちた講演に、約百人の聴衆は引き込まれるように聞き入り、期待を込めた盛大な拍手を送った。
海外日系人協会会長として、全国知事会会長として、今回いろいろな話を聞いたと前置きし、「日系社会のみなさんが胸を張って活躍できるよう、日本に戻ってやるべきことがたくさんある。私は帰ってやりますよ。日本政府にいろいろ注文をつけなければならないと思っている」と三度目の来伯の成果を力強く語った。
「日本政府は日系社会のために充分なことをしているか、はなはだ疑問に思っている。日系社会は世代交代で転換点にある。母国と日系社会の関係を、真剣に、原点に立ち戻って考えなければならない。そして、実行できるものから実行していきたい」と決意のほどを明らかにした。
また世界三大美術館の一つ、ニューヨークのメトロポリタン美術館で二十一日から、梶原知事立会いのもとにオープンした「織部・アメリカ展―転換期の日本美術」に触れ、地方が直接外国で存在感を示す新しい発想を説いた。
さらに情報社会、ネットワーク革命が進行する現在、日系社会との新しい関係として、「日本語を共有財産として、いかに大切にしていくか、この段階でお互いにしっかり考えていかなければ。こちら側のご希望に沿うように、私たちも最善の努力をすべき」という考え方を表明し、具体的にはインターネットを通した日本語学習、文化普及の可能性についても論じた。
質疑応答では「かつて海外日系人協会会館をたて、海外からの日系人大会参加者へ安い宿泊施設を提供する案が何度も提案されたが、そのままになっている」「日系人大会では毎年決議がされるが、実行されることなく消えていく。前年の決議事項に、その後どのような実現努力がされたか報告があってもいい」、「日系子弟に二重国籍を与えることを考えて欲しい」などの要望も出された。
梶原知事は「みなさんもおとなしすぎる。県人会連合会は怒り狂わなければいけない。連合会の意見として書面で出してほしい。言いたいことは、私にどんどん言ってほしい」と真正面から受け止めた。
講演会は百周年記念祭典協会、県連、文協、ブラジル岐阜県人会の共催で行われた。