10月30日(木)
【ヴェージャ誌】ブラジルが途上国連合のパートナーとして期待し、三十年後には覇権国家のうわさもある中国とは、どんな国か。その経済力にものを言わせ国内では人権をじゅうりん、国際間ではその独裁政治に口を挟ませない中国の虚像に迫る。
中国へ派遣されるブラジル人マルコポーロは、年々急増している。新しい巨大市場としてブラジル企業の前に出現した〃巨人〃中国とは、いかなる国なのか、その計り知れない大規模な虚構の仮面をはぐ。
中国の国民に自由主義は、不要なのか。中国に関心を持つブラジル人企業家は、国民に対する中国政府の傍若無人な振る舞いに息をのむ。
民主主義を標榜する国と独裁国家とは制度が対照的だ。キューバでも国外脱走を試みる市民を捕縛し公開処刑を行う。北朝鮮も大同小異だ。中国は未来の大国として敬遠されるためか、その矛盾と蛮行に触れられることはなく黙認されている。
中国に対する制裁は、形式程度で短期間に消滅してしまう。一九八九年の天安門事件では無防備の市民に機関銃の銃弾を浴びせ、その犠牲者数は伏せられた。米政府は政治改革を求めたが、実現しなかった。米政府は中国の矛盾を見ないことでお茶を濁し、通商関係だけを深めた。
それでも毛沢東時代から見たら独裁性は緩和されたようだが、先進国から見るとまだ常軌を逸している。
一農夫はアジア風邪を引き、入院しないで村内に伝染させたという理由で処刑された。保健所の職員はエイズにかかり死刑を宣告された。
国際人権団体は昨年、中国で千人以上が軽犯罪で公開処刑されたと報告した。アル中患者、思想犯、麻薬中毒患者、売春婦は突然、いずこかに連行され、二度と見ることはできないという。四年の強制労働は、日常茶飯事で話題にもならない。
一方では公務員のわいろが横行し、誰でも罰せられるわけではない。一流ホテルでは、売春婦のショーが堂々と行われる。わいろは、先進国が顔負けするほど融通が利く。わいろに渡す資金があれば、何をしても許されるシステムなのだ。
報道管制も厳しい。全てのマスコミやインターネット通信は「天安門」や「人権」という言葉を使用することが禁じられ、使った場合には密告するように義務づけられている。インターネットで人権侵害告訴を試みて、三十三人が反対に投獄された。
中国社会の男尊女卑は、歴史が古い。胎児が女子の場合中絶するので、妊婦の超音波検査は禁じられている。女子の間引きは珍しくない。結婚適齢期の女性が不足するため、娘の拉致と強制結婚は少なくない。嫁が夫の兄弟と関係を強要されるケースも、ひんぱんにある。
中米国交正常化の道を開いたキッシンジャー元国務長官は、毛主席と会見した。当時中ソは蜜月関係にあったが、毛主席は全くソ連を信用していないのに驚いたと回顧録に書いている。中国要人の心中は、図り難い。中国人は、絶対に心の中を他人に明かさないという。世界中が競って中国市場への進出を試みるが、その行く末はどうなるのか見当がつかない。