10月31日(金)
クスコほど古都と呼ぶにふさわしい街は南米でも少ないのではないか。まさに西暦一五三三年、スペインにより滅ぼされるまでインカ帝国の首都だったのだから。
クスコはケチュア語(インカ系言語、現在も広く使用)でへそを意味する。征服後、インカの建物や神殿の基盤の上にカトリックの教会が建てられた。中央広場は今の昔もその中心地であった。
そのカドの最も目立つ場所の一つにレストラン「プカラ」がある。日本人経営であるが、生粋のペルー料理店である。オーナーでヘッドシェフの鈴木健夫さんに話をきいた。元々フランス料理のシェフであったが、ペルー料理にほれ込み、日本のペルー料理店で修行した後、こちらで店を開くためにクスコにやって来た。
私は南米各地を回ってきたが、日本人経営で純粋な現地料理で勝負しているという人はめずらしい。というのも、何処の国でも日本人=日本料理というのが非常に有利であり、無難だからである。外れても中華料理やアジア料理ミックスぐらいであろうか。
だが、プカラの料理を食べて納得した。元フランス料理のプロであった妥協の無い料理、スープ料理一つにしてもきちんとフォン(基のダシ)が作ってあるのだ。日本人や観光客ばかりではなく、現地人も食べに来るはずである。オーナーの鈴木さんは物静かな人であるが、ペルー料理に対するこだわりが「旅行者ではなく、はじめからペルー料理をやるためだけに来た」という言葉からも解る。
また、彼は「やはり文明のあった場所、何よりも平和で豊かな社会であったから、これだけの食材、料理のバラエティーができたのではないか」と推測する。私も同意見である。
様々な食材がペルーにはある。市場にはジャガイモだけでも何十種類も並ぶ。その中から鈴木さんはメニューになりそうなものがないか、といつも目を光らせる。
店はペルー料理でも、オーナーの丁寧な料理、落ち着いた店の雰囲気や食器類、細かなサービスなど、日本的なものが感じられた。日本人の作る南米現地料理の可能性について改めて気づかされた。日本人の繊細で完璧主義的な感覚は料理分野でも評価される。何処の国でも良いものはやはり良い、と最終的に評価され受け入れられるのである。
詳しくはホームページhttp://www.geocities.co.jp/Foodpia/9158/index.htmまで。(つづく)