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存続は自助努力が鍵=県費留学研修問題=日語研修は廃止傾向=旅費負担、受入れ枠で折衝

11月1日(土)

 【既報関連】日本とブラジルを結ぶ大きな柱の一つとなる「県費留学生・研修生受け入れ制度」。外務省が補助金カットを打ち出したことで、各都道府県が事業の縮小・廃止を検討。各県人会にも波紋が広がった。母県からの通知を受け身で待つだけの県人会がある一方、存続に向け知事に陳情したり、事業の重要性をアピールしたりする県人会も多い。いち早く、この問題について検討してきた大分県人会は、往復の旅費を自己負担、さらに研修生の日本語研修の廃止などを条件に存続を決定。同じような動きが、他の県人会にも広がりつつある。「県人会の自助努力」「十分な日本語能力」――が今後、受け入れ制度存続のキーワードとなりそうだ。
 今年三月に県から通知を受けて以来、最初にブラジル日本都道府県人会連合会を通じて問題提起してきた大分県人会は、県費留学生について往復の飛行機代を自己負担、生活費も前年比六〇%に留める。また、研修生についても、日本語研修制度を廃止し、高度な日本語能力を有する人が派遣される。
 七月末の記念式典に来伯した浅野史郎知事に継続を訴えた宮城県人会は八月中旬、県国際交流課から研修生受け入れを巡る文書が送付。日本語研修の廃止や往復旅費の自己負担などの可能性を尋ねた。中沢宏一会長ら役員らは検討を重ねた結果、日本語研修は廃止しても構わないが、旅費の負担を研修生に提示するのは難しいなどと回答。
 また、県との絆を深めるには青年レベルの交流が不可欠として、事業の継続を訴えた。中沢会長は「今まで以上に選考を厳しくし、日本語に問題ない人を送るつもりだ」と話す。
 日本語研修廃止の傾向は、他にも広がりつつある。
 二十三日に岩手県人会に届いた県文化交流課からのFAXは「厳しい財政事情だが、継続に向け努力する」と前向きな内容だった。 ただ、受け入れ人数の縮小▽日本語研修の廃止▽年二万五千円の支度料の廃止――などの条件も付けられていた。さらに、留学生については従来通り一年の期間だが、研修生は十カ月から六カ月に短縮され、渡日直後から実務研修に当たることになる。
 七月の記念式典に合わせた「海外県人会サミット」で増田県知事に継続を訴えただけでなく、県に対し留学生・研修生OBの帰国後の活動レポートを提出するなど水面下での努力が実った格好だ。
 一方、補助金カットの影響を受けつつある県人会もある。
 来年度の留学生・研修生の候補者のリストを県に送ったばかりの新潟県人会は今月十四日、「来年度については保留」との連絡が入った。急遽、南雲良治会長を中心に対策を検討し、県移住家族会長らを通じて県庁に問い合わせたが、現段階では不透明な情勢。留学生を二人から一人に減らされたばかりの同県人会だけに、最悪の場合には積み立てている基金から旅費を負担してでも事業の継続を望んでいる。南雲会長は「正直、戸惑っているがこういう時のために基金だから」と前向きな姿勢を見せる。
 また、宮崎県人会では海外からの研修生の枠が八人から四人に減少。さらにその全てが東南アジアに振り分けられることから、ブラジルの研修生はゼロ。留学生は二人から三人に増加するものの、従来三人送られていた研修生がなくなるため、実際は二人減となる。吉加江ネルソン会長は「研修生は県人会事業の大きな柱」と継続を求めているが、見通しは厳しい。
 母県から連絡待ち、と待ちの姿勢を見せる県人会が多いが、継続に向けた積極性を見せることが明暗を分けそうだ。