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サンパウロ市環境局=日本館に〝民主化〟要求?!=親しみやすい施設に=風当たり強い慰霊碑=防犯対策に課題山積

11月5日(水)

 日本館をもっと市民に開放して――。サンパウロ市役所は現在イビラプエラ公園の再開発を検討中だ。無駄な道路や柵を整理し出来るだけ緑を増やそうとの計画で、公園内にある日本館と開拓先没者慰霊碑も再開発の対象となっている。日本館はブラジル日本文化協会が、慰霊碑はブラジル日本都道府県人会連合会が管理に当たるが、市の環境局はここにきて、「二つの施設を一般来場者にとって、もっと馴染み深いものにして欲しい」と両団体に注文。公園の片隅に隠れた印象が否めない日本館と慰霊碑を「より見やすく、より入りやすくする」ための方策が今後三者の間で講じられていくことになりそうだ。

 先月三十一日、日本館で開かれた環境局、文協、県連の代表者会議に出席した文協の中島エドゥアルド事務局長は、「市の言い分は労働党政権らしく、『日本館を民主化して欲しい』ということ。『もっと入館者を増やすようなことを考えましょう』といっているわけです」と報告する。
 イビラプエラ公園には毎週日曜日、平均して十三万人が訪れる。これに比して日本館の来場者数は「二百から三百人程度」が現状だ。
 平日には茶道、生け花の講習会があるが、「ほとんど習っている人がいない」と、事実上〃開店休業〃にある。
 中島事務局長は「車が入れないため、講習に使用する道具が運べないのがネックになっている。電気自動車ならば問題ないと聞いた。購入して受講者獲得に務めるアイデアもある」と打ち明ける。
 「保存を考えればこれ以上来場者を増やさない方が良いのでしょうが…」
 そう考える中島事務局長だが、「五十年前は畳の暮らしとか、日本人の生活習慣を紹介するのが日本館の目的だった。いまは市民もそういったことをよく知っている。となれば、集客のためのマーケティングを今一度練り直す時期に確かに来ている」とも感じてもいる。
 一方、同じ会議に出席した県連の中沢宏一会長は「現在別々にある慰霊碑の柵と日本館の柵をひとつにするという案が出された。市としては二つの関連性をアピールして欲しいようだ」と話す。
 ここで課題となるのが防犯対策。両施設には、人間国宝レベルの作者による美術品や仏像などの貴重品が保管されていることから、「ただ開放するわけにはいかない。防犯とのバランスをどうとるか、だ」。市の意向との間で妥協案を探る必要がある。
 各国移民のなかで公園内に慰霊碑をもつのは日本人のみ。また「市民の憩いの場に〃墓〃は似合わない」という、文化風習の違いを反映したブラジル人市民の声もあるよう。「多少の風当たりはある。当局とはうまいこと付き合っていかなければ」と中沢会長はいう。
 環境局、文協、県連では今後、建築家や庭園設計士など専門家を交えた話し合いを継続していく見通し。再開発事業はサンパウロ四百五十周年を見据え、早ければ来年一月中にも開始されそうだ。