11月6日(木)
【ヴェージャ誌】新発明は最初、魔術のように拒否される。しばらくして日常生活の中に定着し、それなくしては生きられないようになる。麻酔薬がそうだった。今度は食糧危機を救った遺伝子組み換え(GM)技術の番だ。世紀の発明だが、その大きな反響をどう見たらよいか。
ブラジルの南大河州を含めて十五カ国で過去七年、GM大豆が栽培されていた。中国やカナダ、アルゼンチンでは、GMを完全自由化した。フランス、ドイツ、英国では科学技術への応用は許可したが、GM製品の販売は禁じている。
世界に流通している大豆と米国産トウモロコシの三分の一はGMだ。オーストラリア産綿花の半分がGM。ブラジルは世界一の大豆生産国でありながら、GMが合法か違法か決断しかねている。南大河州の大豆生産者はしびれを切らして、隣国からGM種子の本格的な密輸入を始めた。
神が創造したものに人間が手を加えると、第二の狂牛病を生むという。狂牛病は原因不明とはいえ、GMとは関係ない。マリーナ環境相は、GMが合法化されればPTを離党するという。同相の周囲はGMをのろい、科学者の説明に耳を貸そうとしない。
科学の実験は、失敗は付き物だ。多数の奇形動物や奇形植物ができたのは事実だが、市場には出ていない。米政府の食品管理局と薬品管理局は、GM製品の毒性とアレルギー性の安全が確認されれば市販を許可すると柔軟な姿勢だ。
GM反対派にいわせると、GM推進派は農業生産者をGM関連企業の支配下に置こうとしている。やがてGMなくして農業は、成り立たなくなる。農業を食糧メジャーに隷属させることで、食糧メジャーは世界の〃胃〃を預かる。
ヨハネ黙示録の「売ることも買うことも、できなくなる」という包囲網が敷かれているらしい。生産者は国別、地域別にメジャーの監視下に入ることになる。すでに生産者は食糧メジャーの資金援助を受け、資材から農業機器、小型飛行機に至るまで依存している。
農業大国ブラジルは、国際食糧メジャーの作戦により第一次大戦ごろから取り込まれていたという。GMのブラジル上陸は、その一幕であって本来の筋書きに変更はないようだ。
GM業界は、大手三社が牛耳っている。一社はEUのサインジェンタ、二社は米系のドゥポンとモンサントだ。ブラジルは、モンサントのGM大豆ラウンドアップ・リーディの独占市場となっている。同社にとってバイテク投資は、ドル箱となっている。大豆売上金の五五%は同社の懐へ入り、残りの四五%が生産者の受け取り分なのだ。
環境団体が何をいおうと、GM大豆を植えるか植えないかは生産者の勝手だという。GM大豆を植えた生産者の収益が多いのは、一目瞭然(りょうぜん)。モンサントはローヤリティを徴収する代価として在来種よりも、二五%の利益増を保証している。
GM技術は一九六〇年、〃緑の革命〃としてインドやパキスタン、中国で迎えられた。当地方を襲ったききんで、無数の人を餓死から救った。米国では、B型肝炎の治療に役立つGM野菜が出回っている。今度はGM薬品で〃白の革命〃を起こしつつある。
ブラジルでは、農業生産者の収入増にGMが貢献している。米国では耕作可能面積の限界と地下水の枯渇問題を、GMが解決した。一九四〇年当時のトウモロコシ生産と比較して、現在は半分の面積で八倍の生産を上げている。GMの歴史は新しく、これからGMは驚くべき成果を人類に見せると予想されている。