11月8日(土)
「布切れが小さい頃から好きで集めていた。移住するときにはダンボールで持ってきたほど」
六日夜開幕した第七回日伯工芸美術展で大賞を獲得した寺内一子さん(六七、ヴァルジェン・グランデ市在住)。格子と縞模様にこだわったパッチワーク三点を今展に出品、五十四人の応募者の中から選ばれた。「制作し始めたのはこの十年くらいかしら」と話すが、布切れへの関心は幼少時代にさかのぼる。
一センチ角からの細かいデザインとなるため図面は方眼紙に引く。布の色柄、素材、大きさを様々に組み合わせ織り成す世界。全て手縫いで仕上げるため、出品作の完成は一年がかりだった。模様が単調にならないように工夫を施す。「遠くで見たときと、近くで見たときの印象を違うようにしたい」からだ。遊び心も大切と心得る。
絵も描く。パッチワークは抽象、絵はもっぱら具象だが、「色で勝負したい。色を大事にしたい」という気持ちは一緒。服装の色使いにもそれが反映されている。授賞式には鮮やか緑色のスーツ姿でのぞんだ。
徳島県出身。一九七二年に来伯した。布切れへの興味は、サンパウロ市の三月二十五日街に通うことで満す。なじみの店主がいる布問屋を巡る。「珍しい布切れをいつも取り置いていてくれる」そうだ。
◇
日伯工芸美術展は十二日まで。会場の文協大サロン、貴賓室には陶器、染物など百十九点の作品が陳列されている。