海がないボリビアのサンタクルス市に寿司屋がある、と南米諸国で日本食を見て歩いた〃料理人〃が書いていた。日本人は貪欲だ。隣国チリから蛸や鮭を、同国チチカカ湖から鱒を空輸している。握り寿司は、伝統的なそれなら魚がなければ握れない。しかし、カマボコは鯉科の川魚からでもつくるという。手に入る材料をとことん生かすのである▼南米大陸は海がないところでも、原石のような食材は多い。大豆を含めた豆一般、ミーリョ、さらに多種のバタタ、トマテ、近年になってから導入されたものを合わせると、もうより取り見取り▼ブラジルに来たばかりの日本人初期移民は、リングイッサやモルタデラに辟易(へきえき)して、バカレアウの塩辛い身を焼いてほぐし、飯のおかずにしたという。まだ青いマモンを漬物やみそ汁の具にした、などという話は戦後移民からもきいた。毎日続いてやはり、辟易。そこで飽きない工夫を重ねた▼南米を回った料理人は、日本人は有り合わせの材料から、新しい料理や加工食品をつくりだす天才だ、子供のときからの基礎教育や発想能力、それらが基礎になっている。とした。その鑑(かがみ)が移民だ▼ボリビアの内陸で二ドル前後の、手抜きをしないラーメンをつくり食堂のメニューにしている人は、ラーメンをボリビア料理に加えたい、と計画を語った。いつか、先住民の子孫の顔をした料理人が「ラーメンをどうぞ」と日本人旅行者にすすめる場面があるかもしれない。(神)
03/11/14