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低年齢化する凶悪犯罪=18歳未満なら刑罰を=人格未形成が理由で反対も

11月18日(火)

 【フォーリャ・デ・サンパウロ紙十五日】中等学校生(日本の高校生)カップルが、十六歳の少年率いるグループによって惨殺された事件で、ブラジルでの刑事罰対象年齢の引下げ案をめぐる討論が再燃した。現在、刑事罰対象年齢は十八歳。引下げ派の多くは、対象年齢を十六歳にすべきだと主張している。フォーリャ紙は、宗教家や司法関係者などの意見を掲載した。
 殺されたリアーナ・フリーデンバーフさん(一六)の父親、アリ・フリーデンバーフさんは、犯人の年齢に関係なく刑事罰対象とすべきだと訴えるキャンペーンを実施するという。「Febem(サンパウロ州立未成年者支援財団。日本の少年院と少年刑務所を合体させた施設)に収容されている未成年者の中には、十五歳や十四歳で殺人を犯すケースも少なくなく、ひどい場合は十二歳で人殺しをしている。犯人はどんな年齢であれ、刑罰に処されるべきだ」と断言している。
 ブラジルの聖地として有名なサンパウロ州アパレシーダ市のアロイージオ・ロルスシェイダー枢機卿も、「刑事罰対象年齢を十八歳から十六歳へ引き下げるべき」だと支持している。
 パストラル・ダ・クリアンサ協会の指導者で、パウロ・E・アルンス枢機卿の姉妹であるジウダ・A・ニューマンさんは、この問題を国民投票で決定するのが一番と主張。二〇〇一年と〇二年にノーベル平和賞にノミネートされたジウダさんは、〇四年上半期に投票を行なうことを勧めている。ジウダさん自身は、年齢引下げに対する個人的な意見を明らかにしていない。
 一方、ブラジル全国司教会議(CNBB)のマルシア・アッチオーリ代表は、年齢引下げに反対だ。大サンパウロ市圏担当のクラウジオ・ウンメス大司教も、「治安を良くしたい気持ちは分かるが、事件で感情的になり、年齢引下げという重大事を実行に移すのは良くない」と指摘している。
 労働高等裁判所(TST)のフランシスコ・ファウスト裁判長は、十六歳の少年は自分の行為がどういうものかを判断できるとし、刑事罰対象年齢を十六歳に引き下げることに賛成している。同裁判長は、未成年者による凶悪犯罪が急増しているため、いち早く手を打つ必要があると訴えている。
 対して司法高等裁判所(STJ)のニウソン・ナーヴェス裁判長は、年齢引下げに反対し、「犯罪は厳罰による抑圧でコントロールできない。刑務所を満員にさせるだけだ。ほかの方法をとるべき」という姿勢を表明した。
 マルシオ・T・バストス法務相やニウマーリオ・ミランダ人権擁護局長官も、「十六歳の少年少女は完全に人格が形成されておらず、自分の行動に責任を持てる年齢ではない」と、年齢引下げ案を批判。ジェラウド・アウキミンサンパウロ州知事も年齢引下げ案には反対だが、凶悪犯罪のケースのみ、Febemの収容期間を二十一歳まで延ばすといった対策を練るよう求めている。