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なぜ不平等の国か?=社会予算と人種差別が主因

11月18日(火)

 【ヴェージャ誌】世界銀行が社会・労働調査研究所の主催したセミナーで世界経済に関する報告書を発表した。その中では世界中で不平等が拡大する傾向が指摘されている。
 同報告書ではまた、ブラジル社会における不平等とその歴史的要因について、ブラジル政府と学者が共同で実施した様々な研究も報告されている。そうした研究はブラジル社会における不平等には人種、階層、年齢といった要因が絡んでいると総括し、社会、経済政策の専門家たちはそれぞれ同じ視点で不平等という問題を捉えていた。
 トーマス・世銀ブラジル担当部長は貧困と不平等の関係に注目した。両者は個別の問題であるとともに相関関係がある。不平等を解消しなくても貧困問題の解決は可能である。しかし、不平等の解消なき貧困解消、またその逆も時間と費用がかかり、両同時に取り組む政策が効率的かつ生産的であることをブラジルに関する世銀の調査は明らかにしている。
 両者を結び付ける要因の一つは教育の機会不均等である。中等・高等教育を受けない人は雇用と所得を得る機会が制限され、貧困に陥る可能性が高まる。貧困にあえぐ子供たちを救う必要があり、救うための手段は教育ーこれが最初の教訓だ。
 現在、ブラジルの小学進学率は九七%であり、国民所得が世界平均レベルにある国の八〇%よりも高いことが指摘されるたびに、「質が悪い」や「見かけ倒しの入学」といった批判の声が上がるが、子供たちにとってはどんな教室でも路上よりはましである。教育の質の向上は無論必要だが、就学率の向上を批判するのは誤りである。
 ブラジル社会における不平等がいつまでも続くのは社会の中で片隅に放置される二つの要因、国の不公平な政策と人種差別主義のためだ。特に年金と教育に配分される社会予算が不平等を永続させている。多くの国で所得格差は社会予算の行使により縮小するが、ブラジルはそうではない。
 人種差別主義は黒人の七〇%を貧困状態に置き去りにしているだけでなく、半数以上の黒人に対して教育や好条件の仕事といった社会的地位の向上につながる道を閉ざすことにより、不平等を再生産している。差別の存在を否定し、社会的不平等には別の説明を求める白人社会の黙認とともに、国は社会予算を偏向させる。
 教育分野をみると、公立高校入学者の一七%が上位二〇%、一二%が下位二〇%の所得層出身だが、私立高校入学者はそれぞれ六二%と二%となる。授業料が無料の国公立大学ではそれぞれ六一%と三%で、私立高校入学者の比率とほぼ一致する。つまり、ブラジルの中等・高等教育は教育の機会均等を実現しておらず、不平等をもたらす道具となっている。
 中等・高等教育を受けていない子供たちの大部分はは黒人だ。そろそろ何か強い対策を講じる時がきたのではないか?