11月20日(木)
【ヴェージャ誌】連邦裁判所のサンパウロ市支部第四刑事法廷のジョアン・R・マットス判事は七日、犯罪組織の責任者として逮捕された。同判事は記者団に対し「誰が仕組んだ罠か知っている。私は、それをあばくための生き証人だ」と述べた。
牛をも飲み込む大蛇スクリにちなんで名付けた「アナコンダ作戦」は同判事と前妻の自宅ほか十五カ所を同時に家宅捜査した。百八十一回線の電話を一年間盗聴し、同作戦で判事や刑事、軍警、弁護士、実業家などが一網打尽に逮捕されると予想されている。
同判事は七〇年代、バレーと声楽に興じ華奢な体つきをしている。現在も刺し身とピッツア以外は、徹底した菜食主義。身長一・九三メートル、体重七十八キロ、五十五歳。体重には格別、気を使っている。
電子音楽には、時間を忘れて熱狂する。世界漫遊は食傷気味、専らパリーはチャンプ・エリーゼのCD店ヴィルガンに入り浸りになる。まるで電子音楽とスタイル、女道楽にしか興味がないようだ。現在は五回目の結婚で、法学部学生のアリネさん(二七)と同衾中。離婚した前妻らとは、電話でいつも会話をしている。
同判事は三歳のとき、父を亡くし公務員の母によって育てられた。中学卒業までは精神的葛藤に悩まされたが、法学部を卒業するころから才能が芽生えた。全国司法官試験があった一九八三年、五番目に優秀な成績で合格した。最高裁のジウマール・メンデス判事は、そのとき六番目だった。
ナチスの残党ヨセフ・メンゲルスの遺骨がサンパウロ市で発見され、本人の骨であることを立証したのが同判事であった。英国にいるメンゲルスの遺児を訪ね、DNA鑑定を行ったところ合致した。この功績で同判事の手腕が世界的に認められ、海外では有名人となった。
同判事は関係書類の収集癖で有名。関係者や友人が裏切ったときのためにテープや写真、書類など証拠物件を整然と保管する。各物件はコピーを取り、隠れ家五カ所に収納してある。この証拠物件の提示により、一生を棒に振った高等裁判事も少なくない。
検察庁は同判事の資産が、想像したより少ないのを意外としている。現在住んでいるアパートは、モンテビデオの幽霊会社の所有。検察庁はFBIに依頼して、米国やスイスにある同判事の資産を洗っている。
同判事は一九九二年、ブラジル弁護士協会(OAB)から判決取引で告発された。イタリア人麻薬密売人を、二百万ドルで無罪放免にしたというのだ。結局、同告発は取り下げにされた。