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強姦事件の半数は未捜査=犯人は野放し状態=煩雑な手続きが障害に

11月25日(火)

 【フォーリャ・デ・サンパウロ紙二十四日】サンパウロ州女性保護警察や市警派出所で登録された強姦事件の半数以上が、警察の捜査対象になっていないことがこのほど、サンパウロ州データ分析システム財団(Seade)が行なった一九九七年から昨年までの警察署データの分析結果で明らかになった。
 日本では、強姦事件の被害届け出があれば、自動的に捜査が開始される。強姦などの親告罪は、犯罪の被害者その他一定の者が捜査後の訴追を求める意思表示がなければ告訴には当たらず、公訴阻却となる。被害者が意思表示しないケースが多いため、実際には、データに表れる強姦事件数をはるかに上回るとみられる。
 だがブラジルの場合、女性が強姦の被害届けを出してから、六カ月以内に再度届け出した警察署へ行って「捜査願い」をしなければ捜査の対象にはならない。告訴段階の手前の時点で「捜査願い」という〃障害〃が置かれているため、実際の強姦事件数は日本と比べ物にならないぐらい多いものと推測される。
 ブラジルでは、強姦罪は凶悪犯罪とみなされ、刑は六年から十年の拘禁となる。Seadeの調査によれば、昨年サンパウロ州で登録された強姦被害届け出三千八百三十三件のうち、捜査対象となったのは千九百十三件のみ。これは、強姦事件の五〇・七%で、犯人が捜査もされずに野放しになっていることを意味する。
 さらに、実際に捜査された事件でも、真犯人にたどり着かないケースも多く、強姦事件に対する不可罰性が非常に高いことがうかがえる。
 女性保護NGO団体側は、州が強姦被害者に対して正しい援助を行わないことが、被害者が捜査願いを出さない原因の一つだと指摘している。
 被害者が、強姦の被害届け出をする際、警察署側が被害者に対して何らかの(恐らく差別的な)行為をとるため、被害者は再び同じ警察署へ戻って捜査願いを出すことをためらうという。
 NGO団体「サンパウロ州女性連合」のマリア・A・A・テーレスさんは、「精神的な打撃を受けた被害者に対し、捜査願いや訴追を求める意思表示を求めても、そのような重要な決断を下せる精神状態にあるとは思えない」と言明している。
 ブラジル弁護士会(OAB)女性弁護士委員会のマリア・G・P・メーロ委員長は、「被害者は、警察や裁判所の処置自体を疑い、捜査願いを出すのをあきらめてしまっている」と、女性の立場を弁護している。