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炭と木酢で人生変わった=〝土作り〟が農業の基本=競合調査で儲かる仕組みを=横森正樹さんが講演

11月25日(火)

 みなさん、世界に目を向けてください――。二十日午後二時から文協小講堂で行われた、「農業は儲かる! そして将来性がある!」と言い切る横森正樹さん(六三、長野県八千穂村)の講演会には、二百三十人ほどの聴衆が押しかけ、熱心に聞入った。野菜は、安全で味がよく、鮮度が高いことに加え、なにより「安い」ことが大事と訴える。たゆまない有機栽培の技術追求と地道な土壌作りの秘訣、そして市場分析の大切さを一時間半に渡って熱っぽく語った。

 「炭によって、人生が変わった。素晴らしいエネルギーを持った野菜ができるようになりました」。炭と木酢液を使って土壌作りを長年心がけ、野菜作りがほぼ壊滅状態に近かった今年の冷夏にも、通常通りの生産ができたそう。
 十六年前、愛知県豊橋市のスーパーが畑まで、横森さんの野菜を片道五時間かけて取りに来るようになった。当時はまだ、考えられないことだった。
 値段付けは「農協の平均単価を目安にしてくれれば、いいんだ」とスーパー側に示唆した。横森さんにしてみれば、それでも儲かる。「だって、普通の農家は、段ボールに詰めて、市場までもっていく手間ひまをかけている訳でしょ。それをしない分だけ、儲けになる」。
 スーパー側でも、より新鮮で日持ちのする美味しい野菜が、一般市場価格で販売できるから、確実に売れて儲かる。「お互いが儲けられるようにしないと、長続きしないですから。相手を儲けさせているから、こちらを怖がる」。
 「一年働いて赤字が出るなら、寝ていたほうがいいですね。寝ていれば、何か考えつくから」。横森さんは、市場調査を怠らない。十四~十五年前に、あるスーパーの野菜担当部長に「長野のレタスは要らない。百円で売れる安い輸入物で充分」だと言われた。当時、長野は夏野菜の大産地で、市場価格に圧力をかけていた。そこで横森さんは「私はもう百円で採算の取れるレタスを作ってます」と語り、同部長を驚かせた。
 「食糧自給率が実質三割を切っている日本では、ほとんどの野菜は外国から来る。だったら、外国ではどれくらいのコストを何にかけて生産しているかを調べ、それに対応できるようにすることが大事」と訴える。
 「ブラジルは世界最後の食糧生産基地だと思う。今を我慢して乗り越えれば、素晴らしい時代がくる。ぜひ世界を見てください。政界には食糧が足りなくて困っている国が沢山ある。自分の作っている野菜が、どこの国に輸出され、末端価格でいくらで売られているかを知ってください。また外国から来る商品の採算コストを調べ、それに対応できるようにください」と熱っぽく語った。
 還暦を機に、「これからの人生は恩返しです」とする横森さん。「講演活動は全て手弁当でやってる。何度でもブラジルまで飛んできます」と心強い支援を約束した。
 一時間半の講演の後、じっくりと一時間ほども質疑応答に答え〃カクテルパーティ〃へ。実は、婦人部連合会が用意した食事は立派なジャンターで、夜八時近くまで横森さんを囲んで熱心に話込む姿が見られた。
 講演会は、ブラジル日本文化協会、ブラジル農業婦人部連合会、コチア青年連絡協議会、サンパウロ州花卉生産者協会中央会、全国農業拓殖共同組合連合会サンパウロ事務所、汎ヅットラ花卉生産者協会、ブラジル農業拓殖共同組合中央会の共催。