11月26日(水)
【東京支社】在日外国人問題を問い続ける、原尻英樹・静岡大学教授の著書『日本のなかの世界』。在日外国人の生活実態を当事者の眼差しでとらえ、日本人との関わりについて客観的に分析する原尻氏のような研究は、この問題が一般的になった現在でも、あまりみることはできないという。
本書は横浜中華街、大阪生野区(済州島出身者中心のコリアン街)、大阪大正区(沖縄出身者の集住地区)、群馬県大泉町(在日ブラジル人集住地区)の四つのアプローチからなる。これらの地区は、時と場所を超えて、「異文化コミュニティー」の歴史と現状が重なっている。
著者は、そこから見えてくる外国人に対する日本社会の実相をもとに「日本のなかの世界」を考察する。
日本は文化や言語を異にする琉球国、台湾、朝鮮を併合し、人々は日本国籍に変えられた。だが、戦後、当事者の意向が考慮されることなく日米側の戦後政策により琉球国出身者は日本国籍のまま、台湾・朝鮮は外国籍者に変えられた。日本に初めて大量の外国人が居住する結果となつた。
だが、日本では、「外国人」とは、外国から来た人であり、日本で生涯生活する人々という意味では理解されていなかった。日本の永住資格は、法的には「永住しても構わない」という意味で、永住権利を保証する「永住権」ではない。この考え方は出入国管理のあり方の根本に関わっている、と著者は指摘する。
「外国人」については、マスコミや研究者がつくりあげたイメージの方が一般化していることについては、二〇〇三年か始まった放送大学テレビ番組「多文化共生の社会」(当初は「共生の時代を生きる」)を例にとり、論考し、鋭く批判する。
外国人を受入後は、受入側が責任を持ち対応しなければならない、と指摘。「ガイコクジンについて考えるためには、日本社会を再考しなければならない。なぜなら、ガイコクジンをめぐる問題はガイコクジンそれ自体の問題ではなく、日本社会のあり様が在日外国人に投影しているからである。