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〝正しい農業〟=横森正樹さんの熱い思い=2=「近代農業」からの脱却=いい土作るためにいい堆肥を

11月27日(木)

 昭和五十年に農業を始めた頃は、日本も機械化が進んだ時期だった。他人が捨ててあった耕耘機を一台拾ってきて、十万円かけて修理し、土地も少なかったから、人が見向きもしないような土地を借りて耕しました。
 最初に作ったのが、大根。競争に勝つには、考えないと難しい。私のところは夏場は高冷地ですから、準高冷地の群馬や埼玉へ片道百キロ走って売りにいきました。地元には同じ時期に出荷する先輩がいますから、別の場所へ売りに行ったわけです。毎日市場に持っていくと、信用もしてもらえる。信用が有れば、何かあっても助けてくれるようになるのです。
 自分の能力が一%だとしたら、出会った人の助けが九九%です。素晴らしい出会いにより、考えられない人が出てくるのです。
 白根正志先生(山陰ネッカリッチ社長)との出会いで一八〇度人生が変わった。先生の講演会で炭と木酢液が畜産関係で素晴らしい実績を持っているという話を聴き、これは土壌にも使えるのではないかと思い、懇親会で話をきいた。当時はまだ、そのような土壌改良は考えられない時代で、おかげで大学の先生たちとも知り合えた。
 高度経済成長のころ、農薬や化学肥料に頼る「近代農業」が当たり前だった。でもそれは循環型の農業ではなかった。最大の問題は、土がぼろぼろになってしまうことだった。人間ができるだけ楽をして、土の方をぼろぼろにしてしまったのが「近代農業」だから、これが長続きするはずはない。
 やる以上、危険も犯さなくてはといろいろ挑戦した。県普及センターで、自己負担で六年間、試験データをとり、炭に対して勉強した。炭にプラス・アルファすることで、まだまだ素晴らしい結果が出る。炭によって、人生が変わった。素晴らしいエネルギーを持った野菜ができたんです。
 いい土を作るためには、まず、いい堆肥を作ることから始める。堆肥こそ、土の中に住む微生物の栄養源となるものだからだ。堆肥の原料には牛糞、稲わら、樹木の落ち葉などを使っており、私はさらに木酢液も入れている。堆肥に木酢液を振りかけて、それを畑にすき込んで行く。堆肥以外にも、さまざまな栄養の補給を心がけている。だいたい十種類ぐらいの資材は常に手に入れている。
 一般の農家では、化学肥料を中心に使って、他の資材を補助的に使うケースが多いと思うが、私は逆。ただし、有機肥料だけだと栄養が偏ることもあり、そうなると病害虫が発生してしまうので、私は化学肥料を一種の「薬」として少し使う。
 土というのは、場所や住みついている微生物の種類によって違ってくるので、一概にどんな土がいいとは言い切れない。私のところは、触ってみると「ほぉあん、ほぉあん」としている。
 その結果、スーパーが畑まで野菜を取りに来てくれる。消費者も畑まで来てもらっている。専業農家でよかった。農業だから、このような人生が送れるのです。
 ブラジルとの関係も、マナウスの富士フィルムの前川さんとの出会いから。それも炭と木酢液なんです。前川さんは日本とブラジルの橋渡しをしたいと考え、ブラジルには炭が沢山あるから、日本に持ってきて使ったらといった。でも、私は逆に、ブラジルの人に日本の炭と木酢の技術を教えて、商品を日本へ持ってきたらと私は言いました。

■〝正しい農業〟=横森正樹さんの熱い思い=1=野菜づくりでバラ色の人生=儲かって将来性がある
■〝正しい農業〟=横森正樹さんの熱い思い=2=「近代農業」からの脱却=いい土作るためにいい堆肥を
■〝正しい農業〟=横森正樹さんの熱い思い=3=冷夏でも野菜できた=土作りの原点忘れなかったから
■〝正しい農業〟=横森正樹さんの熱い思い=4=ブラジルは最後の食料基地=すばらしい時代が来る