11月29日(土)
日本には木しか資源がない。それを使った炭で土壌を改良して使っている。長野県の農畜産物を、炭を使ってブランド化したらいいと県知事にも提言しました。うちでは五~十年後には輸出する予定でいる。土作りさえしておけば、世界に発信できる、美味しい日持ちする野菜になる。あとは出会いなんです。
良い物を作れば、必ず評価されます。一年に千ケースぐらい贈っている。それでいろいろ紹介してもらって、〃信者〃になってもらっている。いろいろなスーパーさんが取引きしたいといってくるが、うちでは部長以上がこないと真剣に対応しない。決定権を持った人がこないと無駄が多い。商品が野菜ですから、決定するまで何ヵ月も待ってられません。三重県のある社長は週に二回もきた。
そして相手とは、五分五分の関係を保っている。お互いに儲かるシステムでないと長続きしませんから。一年働いて赤字なら、寝ていたほうがいいと考えます。寝ていれば、何か考えつきますから。
農業ほど素晴らしい商売はないと思います。今までは楽して美味しいものが食べられた時代だけど、これからは違う。
世界情勢も関係します。アメリカはいろいろ仕掛けてきます。日本政府は七百兆円もの借金を抱えている。政府は状況が悪ければ戦争を起す。食糧戦争です。日本の農家をどんどん潰しているんです。末端は年々大変になる。今までの親は土地に愛着があったが、子の世代は簡単に土地を手放すようになっている。その結果、水面下で大土地所有制度が始まっている。お金のない人が土地を借りて、返せないと所有地を全部とられ、貸した方はどんどん土地を広げている。ほとんど農業やる人がいないから、日本では農地は安く手にはいる。
今の日本は大変だが、逆に見れば、チャンスなんです。これからの農業経営に最も重要なポイントは次の四つだと思う。
(1)土作りに投資する。土が力をなくしてきたら、対処療法的に薬や化学肥料で、だましだまし作物を作りつづけることをせず、堆肥をたっぷり入れて土を休ませ、栄養を与えることを考える。機械に回すお金があるなら「土づくり」に使うべき。それ以外では徹底的にコストを削減する。
(2)販売の努力をする。自ら売るための努力をしない限り、いい取引先とは巡り会えない。販売に「受身」はない。供給体制ができれば、自分なりにスーパーを回りながら、ためらわずに営業をしてみる。ここで足踏みしては何も始まらない。
(3)企業感覚を養う。これからの農家は、一人で二人分の仕事をするようになる。ある時は百姓、ある時は経営者。そして、自分のことや利益ばかり考えるのでなく、相手の利益が何であるかを把握して、まずは相手に利益を与える。
(4)コスト削減の限界まで取組む。自分の作っている野菜がどこに輸出され、末端価格でいくらで売られているかを知って、競合商品はいくらでどのようなコスト計算で生産されているか、を調べてください。そして、それに見合う生産体制を作ってください。
後継者の育成にも気を使いました。子どもの頭を耐えず抑え、自分から伸びるように仕向けるんです。大学も、「行きたかったら自分で行け」といってきました。そしていっさいの資金援助をしませんでした。それでも大学行くような子は、将来伸びます。今の日本では学歴社会は終わりましたから、農業していても能力さえあれば伸びられるのです。
世界の食糧の配給は偏っています。日本の食糧自給率も政府は四割とかいってるけど、実際は三割を割っているでしょう。お金のない国は、食糧が変えずに大変だが、日本は余るぐらいに輸入している。でも、日本がそんなことできるのも、長くて十年ぐらいでしょう。
ブラジルは最後の食糧基地だと思う。今は苦しくても我慢していれば、素晴らしい時代がくる。中々思うような値段で売れずに困ったりしているでしょう。ぜひ、世界をみてください。
(おわり)