先月半ば、札幌の夜の歓楽街ススキノで「はしご酒大会」が行われた。日本における「酒」と「酒飲み」への寛大ぶりを改めて知った。〃酒飲み文化〃の特殊性といってもいい。ブラジルとは、いや、諸外国とは「酒」と「人」の関係がまったく違うのである▼ススキノのはしご酒大会の実行委員会事務局はタウン誌出版社。三千五百円(約九十一レアル)払うと、五軒の飲食店の地図とドリンク券がついたスタンプカードがもらえる。カードを胸にぶら下げ、一時間半以内で五軒のジャンルが違う店(クラブ、バー、スナック、居酒屋など)をはしごで飲み歩く。これが大会である▼催しには、今流行りの地域活性化の意味があった。ススキノの場合、酒を飲む人を増やし、店を繁盛させることだ。客側はふだん行ったことのない店を知った。店側は客の新規開拓になった、と大会を評価。協力し合ったのである▼酒を飲むのは大好きだが、いまススキノで九十一レアル支払って、大会に参加したい、と思っているブラジル在住日系人はいるのだろうか、とあらぬ想像をしてみた▼日本を離れて三十数年ぶりの帰国時だった。東京駅の構内をまだ日が高いうちに、へべれけになり、はいずりまわるように歩いている、少なくない人たちを見た。酒飲みへの「理解」を越えて、ただ「イヤだナ」と感じたことを思い出す。ブラジルにいれば、社会的なしきたりの違いから日本流の酒の飲み方との断絶がはっきりして来る。(神)
03/12/03