桂植民地が開設されたサンパウロ州南岸の街イグアッペ。その歴史は古く、今年で四百六十五年を迎えた。
植民地時代から近代にかけての旧跡がそこかしこに残る。街全体がひとつの大きな博物館のようだ。
「古い建物の壁はクジラの油、貝殻、石で出来ています」
市長夫人の石田ルミさん(二世、三七)がそう説明してくれた。
街の中心から車と船で一時間半ほど離れた桂植民地。周辺では貝塚の存在も発見されている、と聞いた。
先史時代に連なる時の流れがイグアッペにはある。そこに日本人移民が溶け込んで九十五年。歴史の旋律はさらに豊かになった。
その夜、十八世紀の教会前で民謡を踊る浴衣姿の日本人女性をみて、そんな風に感じ入った。 (大)
03/12/09