12月10日(水)
オイスカ・ブラジル総局(高木ラウル会長)は、十一月六日から、サンパウロ市労働局と共同で、路上生活者支援プロジェクトを行っている。オイスカは、六月末に建設された廃品リサイクルセンター(リベルダーデ区バロン・デ・イグアッペ街九百五十番)に、研修生を派遣し手芸品の作成方法を指導中。オイスカの研修生と、労働者に現状と将来の希望を聞いた。
同センターは、午前八時から正午、午後一時から午後五時までの二交代制。それぞれ四十五人、合計九十人の元路上生活者が働く。全ての労働者は各ALBERGUE(路上生活者保護施設)などの、市営保護施設から通勤している。月曜日から金曜日に労働、市の援助により最低給料(二百四十レアル)が保証されている。
作業は、市役所、ホテル、園芸関係から受けている。これに加えてオイスカは、新たに手芸品を指導する。現在はナタウの飾り、鉛筆立て、かごなどが目立つ。
「ここの仕事を得るまで五カ月間申し込みを待った。これが、サンパウロでの初仕事」と語るのはアンドレア・リマさん(非日系、バイーア州出身)。五年前に、サンパウロに引越し、夫と三歳の息子を持つ。アルジャーに家を持つが、通勤時間がかかるため週末だけ帰宅している。「将来は夫(現在無職)が仕事を見つけて、サンパウロに引っ越したい。バイーアにいる両親を呼んで、ナタウを一緒に過すのが夢」と、笑顔がこぼれた。
アレクサンドロ・シルバさん(非日系、二五、ペルナンブコ州出身)は、一年前サンパウロに移り住み印刷所で働いたが失業。「先生たちが熱心に指導してくれる。もっと、働きたい」とこの仕事に満足顔だ。「家族を持ち、家を買い、給料がきちんと貰える仕事をしたい。自分のバンカや店を持てたら―」と希望を語る。
「来年の十二月十九日に保護施設から出なければならない。友人のアパートを借りて住む予定だ。この仕事も、市の裁量次第だがあと三カ月、長くて九カ月しか働けない」と苦しい現状を垣間見せた。
オイスカの研修生は、カルロス・グァタサーラさん(一九、パラー州出身)、ジョアン・パウロさん(二〇、ペルナンブコ州出身)、ジョアン・フランシスコさん(二四、マラニョン州出身)の三人。三人で組んで、サンパウロ市東部のファベーラですでに活動している。「たった十五日間で、捨ててある紙などの材料を使い、電気スタンドのカバーを作ることが出来た」とパウロさんは成果を強調する。「路上生活者に仕事を教えるだけでなく、これをきっかけにして、社会の仕組みを見なおし、社会復帰の壁を取り除いて欲しい」フランシスコさんは願望をのぞかせた。
三人は十二月中旬に卒業後、それぞれ出身州に戻り、ファベーラ改善などのリーダー的役割を果たす。