12月11日(木)
【イスト・エー誌】デルフィン・ネット氏への批評は正否こもごもだ。議会内では、いつも話題の中心。七〇年代「奇跡のブラジル経済」の立役者であり、ブラジル国民を借金地獄へ突き落とした責任者など評価はまちまち。ブラジルの経済成長率を一〇%に引き上げたのは、後にも先にも同氏だけだった。
表舞台に立たなくなった同氏に一問一答を試みた。
【政府の経済活性化大合唱の反面、セーラ氏はブラジル経済をノロノロ運転という。あなたの意見は】セーラ氏の発言は、野党連合を率いるための単なる言葉のアヤだ。本意はオフセット(見返り)経済。旗揚げが遅かったが、遅れたわけではない。前政権の功績は、インフレ鎮静であった。経済政策は国際通貨基金(IMF)の指示に従い、前政権は独自の政策を実施しなかった。二〇〇三年のPT政権も、同じだった。
【ルーラ政権の経済政策は、IMF指示の継続で何ら新味はないか】一九九八年の経済危機でIMFが果たした役割は、評価する。前政権は二期目に、また暗礁へ乗り上げた。PTは当時、政権を運営するような状態になかった。前政権は、IMF融資残高の置き土産を置いて行った。PT経済はIMFの恩恵の結果だ。
【IMFの支援は不要か】もう不要と思うが、万一のための備えは必要なことだ。ブラジル経済が安泰であれば、国際金融の投資家も世界経済も安泰だ。ブラジル経済は、すでに成長路線にある。二〇〇四年は三・五%の経済成長率を達成する。それ以上は、今から準備する基礎条件次第だ。
【空軍戦闘機の入札が、航空機産業の発展につながるという根拠は】機種選考は、値段にこだわってはいけない。値段は単なる要因、重要なのは国際取引のオフセット(見返り)取引だ。 【オフセットとは何か】輸入した航空機を改良して大量生産し、輸出する。機種選考は技術の移転であり、産業発展の投資だ。先ずは一回目購入に続き、さらに二回目購入と続く。二回目の購入では、最初の購入機は続々生産されている。必要な技術は、航空機に同行してくる。数々の部品工場が軒を連ね、その派生効果は想像以上に大きい。
【その前例は】先進国の先端技術は、このようにして開発された。先端技術の開発では、先進国も途上国もない。この種の投資は、技術の移転ばかりでなく生産性の向上にもなる。典型的な例は韓国。ボーイング社からF15戦闘機を四十四億ドルで購入し、国内で生産。同機を三十三億ドルで大量生産し、ボーイングの下請けになった。
【戦闘機購入に反対意見も多いが】反対者は愚者だ。韓国が戦闘機の見返りに、クリスマス・ツリーを輸出したか。ブラジルが戦闘機の見返りに、鶏肉を輸出するか。オフセット取引は自主規制がなく自由取引だ。 【戦闘機購入を、どう説得するのか】軍事目的ではなく、商業目的であることを明白にする。航空機産業を育てるため、機種選考は常に行う。本社以上の技術開発をすれば、本社自身が購入するようになる。
【戦闘機購入の融資は議会の承認が必要だが、議員を説得できるか】経済発展のための投資であり、軍事問題を越えてマクロ経済としてとらえるべきもの。理解できる議員は多い。