12月13日(土)
サンタクルース病院(横田パウロ理事長)は十二日、ブラジル日本移民百周年記念祭典協会(上原幸啓理事長)に対し、同病院の増築など四つの計画からなる百周年記念事業案を提出した。一九三九年に日本病院として創立された、日系最古の医療機関からの事業案だけに、上原理事長は「素晴らしい計画。すでに出された案と含めてじっくり検討したい」などと回答した。
リベルダーデ区の文協ビル内で横田理事長から事業案の説明を受けたのは、上原理事長と事業案の検討責任者である吉岡黎明プロジェクト委員、サンパウロ総領事館の浜田圭司領事ら。
冒頭、横田理事長は一九三九年の落成式以来、日系社会をはじめ、ブラジル社会に貢献してきた同病院の歴史や、開院に向けた先人の努力を紹介。「戦時中でさえも、ブラジル人と日系人の医師が献身的に従事した」と日系社会における貢献度を強調した。
この日、提出された事業案は(1)一万四千平米の病院に新たに一万八千平米の病院を増築(2)高齢者が日帰りで介護を受けるディケアセンターの新設(3)高齢者向けの医療センター(4)社会福祉のための基金創設――の四計画が柱となる。
受け入れ体制の倍増や、施設強化など病院の充実だけでなく、高齢者が食事や運動、孤立化を避けるための介護などを受け持つディケアセンターを設け、理想的な介護の実施を目指す。
同病院は現在、百七十二ベッドを所有、月平均で一万八千人の患者に対応するほか、二十四時間体制の救急部門には月平均で九千人が来院するという。
予算としては総額で四千六十万ドルを見込んでおり、同病院が千五百六十万ドルを捻出。さらにブラジル国内で五百万ドルを調達予定だ。横田理事長は「日本政府や各都道府県から二千万ドル以下の協力を得られれば」と見通しを語る。
病院の増改築については、以前から検討していたというが、具体的に百周年事業案として企画したのは、今年十月。県人会の記念式典で来伯した山形県知事夫人が、急病のため同病院に入院したのがきっかけだった。同病院の重要性を身をもって知った知事から、事業案へ協力の打診があったという。
「寝たきりの母を非日系の医療施設で診てもらっているが、利用者の四割近くが日系人。こういう方を日系の病院で対応する必要がある」と意義を説明した。
吉岡プロジェクト委員によると、十二日時点で記念祭典協会に出されているのは十事業案。「全ての案を検討して、記念事業を決めたい」と話している。