先日訪ねたリオで珈琲を考えた。
街のバールで注文したときのこと。カップは出てきたが空だった。砂糖を先に入れて下さい、という。
給仕が持つシルバーのポットが目に入る。重厚そうな代物だ。あの口から目の前で注がれると思うと街角のカフェでも格別感がある、と風情に思った。
すすってみれば、これが熱い。他所でも試し飲んだが気温四十度の港町のカフェは、高地サンパウロのそれより幾度か熱いのだ。
リオは王室ゆかりの旧都。恐らく正統な作法、飲み方はここに残るとみてもいい。それがいつか、どこかで、あらかじめ砂糖入りとか、温めといった亜流が生まれた。
移民の父・水野竜が帰国後、喫茶店を開いたことに始まる日本の珈琲文化はどうか。氷と一緒に味わったりする。香味が消えるためこれを「奇風」と嘆いたのは永井荷風だった。古き良き風流の居場所はどこの国でも失われる一方だ。 (大)
03/12/16