こういう人を真の篤農家というのだろう。長野県で高原野菜をつくっている、がんこ村代表取締役の横森正樹さん。さきの講演会で農業はまず土作りだ、と説き、いい土をつくるため、堆肥を常に補給しよう、と助言した。現代の農業を「近代農業」と表現したのはたいへんな皮肉である▼講演会を聴講した、特に農業に携わっている人たちは「分かってはいるんだが」の思いが強かったのではないか。「近代農業」による、農薬、化学肥料漬けの土地は死んでいる。死んでいる土地から生産される野菜も死んでいる。ブラジルで横森さんの説くような営農をしている人たちは、こう述べる▼死んでいる野菜は単に形だけ野菜である。野菜の命(いのち)は、香りと風味、そしてそれぞれの栄養価。一般に市販されているものにはそれが極めて乏しい。噛むと固く、日保ちもしない▼本来の、本物の野菜は一部の農業者がつくり、一部の人たちが消費しているのが現実だが、どうしても「近代農業」によって栽培されたのより、土作りに手がかけられている分、高価についているようだ。見栄えがしない、という評もある。消費者のなかに、多少(値段が)高くても買おう、といった機運が強まり、それに生産が量的にともなっていけば、理想的である▼現在フェイラ・リブレで「無農薬」と断って野菜を販売しているバンカがある。残念ながら、特に人気があるというふうでもない。消費者の意識向上(変更というべきか)が先決のようだ。(神)
03/12/17