12月23日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙】企業活動と自然環境保護は完全に相容れないものであることは、これまでに何度も示されてきた。しかし、サンパウロ州内陸部のいくつかの地域では現在、全く逆の現象が発生している。そこでは企業活動の成功がもとになり、生物多様性の点で、世界で最も豊かとみられる大西洋森林が回復したことが明らかとなった。また、自然環境が良くなることで企業の収益も向上しつつある。
サンパウロ総合大学経済経営学部大学院に提出した博士論文、「サンパウロ州における大西洋森林の回復要因」で、農学者のエーレルス氏は国立宇宙調査研究院(Inpe)の衛生写真とSOS大西洋森林財団の作成した森林分布図をもとに行った研究成果をまとめた。
初めに資料で確認できたのは、九〇年代を通じて続いたサンパウロ州の大西洋森林の破壊だった。従って、全体として自然環境は悪化したとみなせた。しかし、細かく分析すると、ある地域では破壊が止まっただけではなく、回復もみられた。「サンパウロ州のほぼ三分の一に当たる二百四の市で大幅な森林の回復が確認でき、これまでの破壊傾向は覆された」と同氏は話す。
次に同氏は破壊傾向の変化した理由を調べた。最も重要な変化は八〇年代以降のさらに厳格な環境保護法の制定、公的機関による監視体制の強化と非政府組織(NGO)の保護活動への参加だった。二番目に重要な理由は農牧業活動の減少だった。特に丘の頂上や川岸などの環境保護区域で活動が減少し、森林再生が容易となった。
これら二つの要因はすでに確認されていたもので、同氏の論文の主な貢献は三番目の要因にある。それは自然遺産の価値を高める事業計画が進展したことだ。こうした事業には農場のホテルや冒険を売り物にする観光が含まれる。
「大西洋森林の回復した三つの地域―カンポス・ド・ジョルドン周辺のマンチケイラ、ブロッタスを中心とするクエスタス、リンドイア辺りのシルキット・ダス・アグアスーでは、零細・小企業が平均以上に集中している。そうした企業の構成を分析すると、二〇%がエコツーリズム、民宿、といった自然遺産を利用する企業だった」。また、三つの地域では人間開発指数(IDH)がサンパウロ州の平均より高いことも確認された。
調査対象となった各市では九五年から二〇〇〇年の間に総計二万三千四十八ヘクタールの面積の大西洋森林が再生していた。「巨大ではないが、意味のある面積だ」と同氏は言う。「五百年間続いた破壊の後、経済成長、生活水準を向上させながら同時に大西洋森林を保護し、拡大することも可能であることが調査結果で示された」。
森林保護の最善の方法は、完全に隔離した状態で保護するのではなく、持続可能な方法で森林の利用を可能にすることだと数年前に環境保護者たちが主張していた考えをこの論文は裏付けている。